2018年2月9日

自然科学と哲学の関係

哲学や倫理学を無視したり軽蔑する傾向のある自然科学者は、文明社会に生きていくにあたって対他的人間関係や自己の人生を有徳に処するにあたっての知識が欠如しているのだが、それに気づくほど道徳知能が高くないのだ。特に、普遍的倫理が物理や化学で真とみなされている認識ほどの厳密さを伴って存在しない、という勘違いは、潮流論の無知に起因しているにすぎないし、倫理分野での普遍性、たとえば善意が自ら見いだせない己の無知を暴露しているだけだ。更には自然科学の全知識においても厳密な意味での真は確認も確定もされない。哲学や倫理学は真偽を部分集合にもつ全体集合としての善悪を対象にする知識の体系だから、自然科学という一部の判断に用いた実証主義的思慮が使える範囲だけがあるのではない。真偽の判定と善悪の判定では基準自体が違う。優秀な自然科学者や数学者が社会科学や倫理学、哲学の思慮で大抵の幼児に劣る場合もある。