2010年5月23日

古里の音

白妙と遠くの映える山の虹色
薄やけのあさのけぶりしつゆの町あい
淡い日にわがしつらえし月の傾く
はてしなき宇宙の底をうつす海のね
真夜中に干した烏賊とはきづかぬ潮風
咲き捨てる庭の慈し雑草はなし
頑なのおとの眠りはそこしれぬ春雨
百足はゆくえもしれずに雨宿りおわす
はみ出せばただ白線は少年の道
迷い出る蟻の王族はお帰り遊ばす
少しずつかわりゆく世を吾はまなびし
羽衣のつつむ思い出こそはすぎけり
紫の人形の仕手は遠く異國ぞ
背丈のみかわれど心は同じ人の間
沖縄の言葉は知らずその浜織る波
ふるこさめ御代をいとしむ様は示さず
とこしえの来世を照らすこの眼を描く
あまふりの楽しみこそは東洋の話
しとしととふる雨に添う紫陽花なつかし
きこえるは古里の音なみの静けさ
のこりなき跡形なきしまちなみと空
どこへでもゆくはたましいこの子に宿りし
戯れに眺めた運河の香さえもおぼえし
きえゆく土の記憶は庭となりし空き地と
たんぽぽは平和を担保に咲く花そ
どこへでもつづく道のりこそは茨か
かわらない坂道さえも気に入る水空
行水の鶯を待てる小さな水瓶
奇妙な程この世は巡り心さめけり