鮮やかな半島に穏やかな太陽が照り返す頃、少年は海を眺める。山奥から響いてくる文化の音が耳元に春日の彩りを添える。運び続けられる空模様には幾重もにたなびく八千代雲。花びらが散り、少年の目の前を満たした。それから彼が大人になった。どこへ去る船か、飛鳥を連れて流れてく。もうかつてのように胸を震わせることもない砂浜の小さな湖に、子どもが遊んで舞う。君はそこに何の真を視たのだ、繰り返される命の営みのかなしみを。それとも失われていった夢の欠片を。海の向こうからまれびと来たりて、新しきもの、不吉なもの、なべてのものをもたらしてくれる。だが、そんな風景にもいつか終わりが来る。老人は月の沈む明け方の地平線へ自らの骨を投げた。波は弓なりの曲線を打ち寄せて時の渦を描いた。深々と降る細雪が墓碑に積もった。