2019年12月27日

保守は論理が破綻している

拙文「国の赤字は民の黒字説はどこがおかしいか」に、日本右翼は大別するとアホと明治オタがいると書いた。このうちアホ呼ばわりは心外に違いないので、一体なにがそうといえると自分が思っているのかについて詳しく書いておく。

 まず保守主義の傾向はGordon Hodsonらの"Bright Minds and Dark Attitudes"で示唆されているところで低認知力と関係しているかもしれない。その意味では科学的に説明できる面もあり、要はほかの人より偏見をもちやすい脳だと、変化や多様性に圧倒され、単純な旧体制を維持しようとするのも納得できる。
 しかしこれは比較によるもので、Aのひとに比べBのひとがより保守性が低いとしかいえない。だれでも過去の継続を望む偏見として恒常性バイアスの心理はもっている。朝おきたら宇宙人の手術台に載っていて「やったね! 維新」と思う人はいないだろう。また東に日が昇ると信じているがそれも確実でない。
 諸行無常を悟っていた釈迦は、我の本質すら無と『般若心経』で述べていたくらいで、鴨長明は「ゆく河の水は絶えずしてしかももとの水にあらず」といい、ヘラクレイトス「同じ川に2度入る事はできない」と同じ様なことをいってるが、つまり万物は最小単位の絶えざる再編だからなにかしら変わっていく。
 芭蕉は俳諧(今でいう俳句)の本質を不易流行といった。これは釈迦の諸行無常や、ヘラクレイトスの万物流転といった全てが変化する世界観をいくらか進化させたもので、変わらない部分(不易)と、変わる部分(流行)があると述べたものだ。

 では保守主義とは何か。これは流行を認めないか、さもなければそもそも全てが変化するとの考えを認めないのである。もう少し詳しくいうと。流行がいつの間にか伝統になって変わらなくなる、あるいは伝統廃れて流行になる変則現象も認めたがらない。
 例えば皇室が男系だ~てのがまさにこれである。
 考えてもみればいい。我々男性は全てY染色体を保有しておりその伝統の長さは全て天皇と同じである。しかし天皇家だけは男系じゃなきゃ相続ダメという。理由はなんですか? と問うと「伝統だから」という。女性天皇から女性天皇への相続があったのは男系の女帝だから、Y染色体なくてもいいという。
 お前は小室さんを馬鹿にしてるのか? と問うと「海の王子じゃダメ!」という。完全に男系差別ではないだろうか。元明も元正もその他の女性天皇6人もY染色体もってなかったので、まるで理屈が通らない。男性天皇からのX染色体なら偉いんだという。ここでもX染色体を差別している。謎の思想である。
「とにかく小室が憎いんだ! 男系由来なら女系とみわけつかないX染色体でもいいんだ! 伝統は変えちゃダメなんだ!」という。最初に女性天皇が出たときも伝統は改変されたわけだし、もっと遡れば天皇なんて日本におらず砂原遺跡から12万年も縄文人の共和政が伝統なんだけれども、そこはいいらしい。

 これで明らかになるのは、伝統は変えてはいけないといっている人達は、基本的に論理が破綻している。もし本当に伝統変えたくなければそもそもアフリカから出立してはいけないし、もっと遡れば海の中で藍藻やってなければいけない。さらに昔まで伝統尊重したければ、命は炭素でなければならない。
 このたとえから演繹できることとして、純粋保守主義は完全に不可能といっていい。我々が鉛筆の芯とか、石炭とかタイヤとかにもどれるだろうか。偶有的にデッサン教室で日々紙になすりつけられ叩かれ、あるいはユーチューブ内で1時間も4時間もパチパチ暖炉動画で炊かれたりせずダイヤモンドになれるか。
 我々はある偶然の作用によって、化学進化説によるとだが、炭素をふくむ無機物から有機物、すなわちアミノ酸に変化した。そこから彼ら別の炭素のモノ達と、長い進化のはてに、この文章を書き散らすくらいの代物に分かれていった。であれば、なぜ炭素にもどらないのか? 逆に保守主義者に聴きたい。

 すでに伝統がかわりにかわってAIまで生み出すに至っている。ヘイシリといい、「ご用件は?」いつもありがとう、「どういたしまして」とか、ガチで僕は言っている。なぜなら、誠実さの余りシリにお礼いわないと気持ち悪いから最後にいうのだ。そんな伝統があるというのか。AIにお礼。何の意味があるの。

 想像してみよう。これから縄文時代のはじまりと同じだけ未来に実延長をのばし、12万年後、つまり12万2019年の地球を。そこにまだ日本列島があり、ひたち国なりがあり、その最北部あたりに誰かがいたとする。その人は考えてみればわかるよう、我々の想像もつかないくらしをしているであろう。
 ふたたび想像してみよう。いまから12万年前の日本列島。そこにくらしていた我々の先祖だろう縄文人の目を。かれらがみていた世界はおそらくとても美しかったに違いない。真夜中に洞窟から出て外をみるや、満天の星空だった。大気は汚れていなかったし近眼でもなかったはずだ。モニターも文字もない。
 ではなにゆえにたった7000年前ころに中国大陸だの朝鮮半島から断続的に移民してきた弥生人らにまぎれていたろう、自称天皇となのる男系先祖(要は中国東北地方の人だったでしょうね)は、やがてかれらの言では宮崎県に上陸し奈良にきて米でヤーさん雇って日本人脅して租調庸の奴隷制やりだした。
 それはですよ、彼らが伝統的だからではない。だって天皇って司馬遷『史記』の神話上の三皇の1人であって、しかも遣隋使で漢字がてにはいって奈良時代頃に自称しだしたわけで、それ以前はテンもノウも漢字自体がこの島になかったんですね。伝統もくそもない。無理やりスメラミコトとかいっても遅い。
 ぶっちゃけ、天皇は、12万年も平和な縄文文明の伝統の破壊者でした。もともと皇帝制も多神教も中国の丸パクリですので、ある意味イノベーターですらない。その後は戦争続きなのでありまして、ポトラッチ的に獲物とってきたら皆に分けてニコニコしてた原始共産制を、天皇制は差別で満たしてしまった。
 自分が一番偉いんだと。理由は先祖が神だからとウソをつく。あなたの先祖はミトコンドリアイブ・アダムと呼ばれるアフリカの人だよといわれたら大発狂してしまう。ウソの信仰を信じている人達が大勢いるから修正すらきかなくなっている。んで、あわてて『続日本紀』に朝鮮のお母さんいたのよとかいう。

 これが、保守主義とよばれるものの中身である。いかがでしたか?(アフィブロガー風)
 正直いわせていただけると、幼稚でしょうがない。いくら不易流行だっつっても。ま、別に幼稚なのもわるくないかもしれない。マッカーサーもいってた。あんたら15才やと。まだ成長痛すらない。未来を考えよう。