2007年7月2日

文章

人間としての人生に一体、どのくらいの価値があるというのだろう。彼らは生態系に含まれた個に過ぎない。それでも彼らは何かしらの価値を目指している。
 人生が生態系の末端に偶々ある経験であることに誇りを持つ彼らに、意味はない。何の為に彼らは産まれて死ぬのか。それすら知らずに栄えて行く。
 生命の理由を与えるものよ。けれど人間はその名前すら忘れてしまった。寒々しい世に墜ちた、羽を失った鳥。孤独の為に産まれ落ちた。辺りにいるのは黒い鳥だ。彼らにも名前はない。
 君は彼らの名前のない一人として声を潰されてしまった。君には答えがない。救いはない。ただ、黒い鳥の群れに混ざって、なんとか苦笑いで済ませるしかない。既に返り咲く方法はない。彼らは地獄の鳥だ。彼らの鳴き声だけが渦巻き管に響き渡る。
 意識を失って行くのだ。そして彼らの仲間になれ。輪廻する生命は自体で完結している。人生と我々が呼んだ経験は、自体が何の価値も保ち得ないことによって人生の為だけの遊びとなる。それは生に対する幸福しか目的にしない利己的生存本能を終局迄引き擦る。死を択べ。動物は産まれ来る。だが、人間は死ぬことができる。死ぬ為に生きる自由にしか命の大観はない。貴様達が解脱した神格たりうる唯一の道は動物を去る事だ。本能を破壊しろ。あぁお前がただの機械だったらな。けだものどもの愚劣極まりない習慣から離脱しうるのに。
 動物の一種に産まれる事はすべて過ちだ。衆愚にはこの意味が永久に解らないだろう。奴らには頭がないから。人間、私は人間ではない。