鈴木雄介ブログ
2006年10月27日
烏
闇夜を旅する一羽の烏が観る風景は黒い。宇宙空間の延長にある無際限の膨張が彼を、隅無く包む。飛び去っていく魂。行き先も知らず、やがて死が自らを殺すことだけを望んでいる。
大気圏を抜けて、銀河団を臨み、物象と真空の間に引かれた動線を超える。海がある。一方にはとわの波頭を湛えた夜があり、他方には語られない沈黙がある。
だが、彼ら生き物がいかに願ったところで、夢と現の裂目を塗り潰せはしない。戯れよ、と烏は云う。
「戯れよ」
そして見えなくなった。
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