2025年12月28日

もしもう何もなくとも

永遠に輝き続ける星はない
君は誰よりそう知っていた

まるで深海を泳ぐあのくじらだった
ときおり完璧な作り笑いの裏で
冷たいしじまのうちに息継ぎする
大都会の喧騒ケンソウはどこもやるせなく
君は死んだ魚の目でその日暮らしの宇宙を泳ぐ

けどただの野原をよく眺めてみて
初めて気づくことだってある
僕が何気なく歩いていて
いまにも踏みしめてしまいそうな足もとにあった
この小さな植物を風で揺らしているたえなる陰影こそが
僕を僕たらしめている引力の証だった

もし君がいなければ
この宇宙はただただむなしく
果てしなく広すぎ
ただひたすら清らかな空だけがあった
そこに落ちてしまうのもあるいは悪くはなかった
でも僕はこうして君を見つけてしまった

泥にまみれて生きようともがく根っこを土に隠し
今にも消え去りそうな笑顔で咲いている
野に咲く一輪の花
この荒れ果ててしまい
どこにも救いようのない世界で

たとえ真夜中の満天に散った星屑たちのささやきや
あるべき神のあり方でさえ
君がいたことを時には忘れてしまっていても

その小さな小さな花びらの一枚一枚ずつが
自然界で不条理に積み重ねられる風雪に耐え忍びながら
これまで悩み苦しみながらも生きんとするあらゆる努力が
たとえ綺麗な文字面で埋まるべき
誰が聴いても美しい物語じゃなかったとしても
それどころかよく目を凝らせば
誰か心もとない人からすでに踏まれた跡がついていても
僕はその命の重みごとかけがえなく想っている

もし愛というあの使い古された常套句ジョウトウク
まるで無意味になるほどのへだたりがあっても
たとえあのどこにでもいる家族の様に
光速よりすぐに出逢えはしなくても

実は君の姿を穏やかにいつも包み込んでくれていた
あのまばゆい恵みの輝きの中で
この心同士が虹色に変わって混じりあえさえすれば

ありとあらゆる華やかな季節が過ぎ去ったあとで
もしもう誰もがこの奇跡を忘れてしまったとしても
僕はきっと君という存在の
たしかに帯びていた この手のひらの温もりを
またここに探しにくるつもりでいるよ