2022年5月30日

陰影

歯のつめものとれたんだけど
歯医者いきたくない
こわいから

あと純粋美術系ならわかってくれるだろうけど
診察券用の職業欄に画家とか美術とかかくと
金も地位もある医者に訝しそうな表情される
僕らは常に大迫害を受けて生きている様なもの

ところでさっき自分で確認したんだけど
穴が開いたのは歯全体でとても小さい箇所だ
これだけで人生に絶望するのだから
自分はもともとこの世に生を受けても
到底いきのびえない超繊細な変異かもと思う

勿論それゆえこんな詩も書けるわけで
物事には一長一短があるものなのだろう
自分の体験してきたなべてのことは
明らかに全人類より幸福な面もあったろう
自分は一般人よりはるか多くを陰影深く感じる
だから自分の人生は心地よさも莫大に大きい
その反面ひどい目にあえばそれも甚大に感じる

歯の小さな小さな部分に損傷ができた
それだけで人生自体に絶望する
恐らく昔の人々はとうにしんでいたのだろう
物が食べられなくなってしんでいったのだろう
縄文時代は正しかったのだ

人が長生きし続けるのは決して理想ではない
人の命を永続させたがる試みは失敗する
代わりに残るのは生きている間の陰影だろう
目的の生があるなら自分がまさにそうだろう