我々は何かを書き見返す時、次の瞬間からそれを書いた時の自分と既に違う。これを書き手の差延(又は能動的差延)とする。同時に、文を読み取る時もその文に対し時々刻々と違う解釈を行う。これを読み手の差延(又は受動的差延)とする。
人が何かを作り受け取る常にこの2方面の差延が働いている。
人は何かを作る時、その中に自分を正しく照射しているとは限らない。自分が自分を欺く事がしばしばある様に、ある文が一見その人を語っていても、実際には別の口舌を述べている様な場合がある。もしくは精密に自己を現せていない。より厳密には、人は言葉の様な記号で自分の内観を完全に表せない。