2019年12月26日

滅私奉公は忘れ去られたか

新渡戸の『武士道』では、サムライは私事を公の後回しにしなければならない、という滅私奉公の倫理観が出てくる。戦に出かけねばならないとき家族を捨てねばならない。これは日本人らの中に、多かれ少なかれ今も受け継がれている傾向がある。それに気づいたのは、ある京女に次の様にいわれたことだ。
 昔あったピグなるSNSモドキで政治広場なる場所が、ある大阪人の荒らし一派によって凄まじい混沌に陥っていたのだが、自分はそれ以前に2ch文学板で村上春樹(っぽい演技をする)一派に事実上敗北し撤退戦に陥っていたので、今度は負けられないと決意し、24時間監視し徹底抗戦の果てに勝利を収めた。高がネットゲームかもしれないが、その間にはあまたの政治戦術が大変複雑な様相を呈し、自分の知能をすっかり変えてしまった。調度、一度本物の戦場を経験済みの兵士の目つきが違うみたいなもんで、とかくガチだった。
 この戦の間に、自分が恋人を公務より後回しにした、と或る京女が指摘したのだ。

 実はこの戦でも自分は一度敗北していた。序盤の1年間の事だが、普通に正攻法で行った所、大魔王ハーゴンの様なボス(イトキチ)の扇動策にはまり、手先(なな一派)に囲い込まれフルボッコになり、アカウント削除して雲隠れした上で、戦場の情報収集を続ける隠密アカで復讐の機会をうかがっていた。
 この頃、ピグ内のニートの酒場なる場所でうらぶれていたところ、のちに不可抗力で恋人状態になったミキなる人物と会ったのだが、自分がこのひとの精神的な支えの元で再び戦場に復活したあとで、その京女は広場界隈にやってきた。仮名は拙文「政治広場史」調べればわかるかもしれないが、Lとする。
 で、Lとはここで説明するのがはばかられる人間関係みたいなのがなくもなかったので詳細は省くが、私事に該当する部分を除き、公に演じられていた要所だけ書くと、この女性アカは何らかの意味でミキをねたんでいた節がある。その上で、「あなたは(まつりごとを優先し)ミキを叱ってましたね」という。

 確かに、このミキというひとは、IQとか世間しらずとか社会性がないとか自閉症とか色々な面でもしょうがないのだろうけども、あらゆる点で公私混同しているので、当人が話したいと思ったら目の前で他人が虐められまくっていようがボコボコに犯罪被害にあっていようが、お構いナシに自分を独占したがる。
 結局、広場の状況が致命的なとき(イトキチ一派が直接犯罪行為を実行している様な時)には「またあとで」とか「ちょっと待って」を超えて、「邪魔するな」くらいの感じで私事を後回しにしないかぎり、あの犯罪者の巣窟をあそこまで治安回復は永遠にできなかったのが真実で、やはり武士道だろうと思う。

 Lもだが、正直いって欧米かぶれの人生観というか、あるいは町人倫理というか、滅私奉公なしに成立しない義務的仕事について理解がない可能性がある。例えば消防士とか自衛隊とかがそれであり、彼らが命がけで人命を救う必要がある場面で「構ってチャン」やってる家内がいたら、それはふさわしくない。
 欧米人は日本人に比べ、滅私奉公の倫理観が希薄なのが事実だろう。だから白人の夫のがいいだの、それはご自由にという話だが、もともと戦が仕事だった武士からいったら禅の修養同様で、いざとなれば潔く一命を捨てる事がすなわち主君への忠義、そこで家族が優先だとか育休だとか職能が違うのである。

 この世には自分の命を懸けないと成立しない仕事や、その様な立場の人がいるのである。そしてその人は、いいかえれば貴人であり、庶民ではない。貴族の義務とはこのことを意味している。普段から特権を享受している、もしくは奇特にも普通を超えた徳性をもっている者は、進んで自己犠牲する責任がある。
「誰も自己犠牲なんてしたくねーよ」とか、「お前は貴族じゃなくニートやろ草」とか、「いや、仕事とかどうでもいいし。そもそも仕事じゃなくてネトゲだし。お姫様の私だけ最優先じゃなきゃ雑魚」とか。「育休とって主夫しろ」だの。それはそうだろう。一般人はそうすべきだ。だが次の話を思い出せ。
 天下を取る必要が絶対にあった家康は、驚くべき事に、当時の上司にあたる信長に、妻子を殺してみろと命令された。家康は人質にとられ盥回しにされ、悲痛な少年時代を送っており、二度と戦国の世を復活させない未来が絶対に必要だった。家康は実際に妻子を殺し、やがて鬼として江戸の太平の礎を築いた。
 つまり家康は今の価値観からいえばサイコパスとしか判断できない究極の滅私奉公をやった果てに、あの最終局面で信長の手下だった秀吉の息子に濡れ衣着せ、やくざでしかない行動で敵対勢力をほぼ完全に殲滅するに至ったのである。そんな恐ろしい逸話すら武士道の原型にある。だれもまねすべきでないが。

 進次郎が育休とらない。ダメだねえ。みんな言っている。現代の価値観が欧米化しているかぎり、日本もそれに見習って、仕事なんて家庭より後回しにしなければならない。滅私奉公してるやつは人でなしである。
 だが本物のもののふならば、究極では全てを犠牲にし、後世の責めを甘んじて受けるべきだ。