日本人全般を相手に原則として絶対に議論をしないのは処世にとって最大に重要な点だ。少なくとも海外の文化に教育その他で慣れてしまったり、独学等でこの点を見逃していると手痛い目にあうことになるだろう。日本文化に慣れている人なら高学歴相手でも同じで、彼らは議論の能力が全くない。
日本人全般は、義務教育などでの独特の文化習性の植えつけを経て、「和」と彼らが呼ぶ馴れ合いを至高原理と考える。正確に言うと考えるまでもなく、その場にいる多数派に群れ、自分の意見をもたないか、集団の多数派に同調するのを正しい行動とする様にしつけられている。つまり少数意見を弾圧する。日本人全般がファシストだという洞察があればこれは全く正しい。彼らはファシストだ。それも多数決ファシストといった部類で、いわゆる全体主義の傾向が激しくある。この習性を一言でいいあらわすのが「和」という言葉だ。彼らは全般として個や自我が確立していないし、寧ろ自他の違いをひたすら嫌う。
日本人全般を相手になんらかの点で議論をはじめると、彼らはそれを「喧嘩」と呼び、抑圧したり弾圧したりを試みようとする。要は意見の違いを理性的に交換する、という風習が全くないのである。逆に彼らは、自他は常に機械のよう全く同じ型にはまった同一の物だという前提を狂信しそれを疑わない。
福沢諭吉は明治時代に、『福翁自伝』でこの議論の風習のなさを指摘していたので、平成・令和初期まで日本人全般の習性は何も変わっていないということの様だ。討論の授業は文科省が導入していたと思うし、個性を尊重させていた時期もあったが、その教育も「和」の抑圧の前で何の効果ももたなかった。セロトニン・トランスポーター数の少なさが日本人全般の遺伝子にみられる、したがって不安がり易い脳を遺伝しているので同調に執着し易い。これが現時点で「和」と呼ばれる風土病・民族病が日本人全般にみられる原因だと思う。いわゆる虐め問題や神道信者含む右翼らの排他的思想にも関連がある筈だ。
天皇はこの様な日本人全般の行動習性を操る教祖兼世襲権力者として現れた者なのだろう。「和」を行動原理とする鰯の群れの様な集団なら、大上段に神格を偽装し、神託ぶった命令を下すだけで相当の効果を持つだろうからだ。勿論これを疑える知能の者も少数いるから、その種の知性を彼ら皇族は陰に陽に暴力で弾圧してきた。
日本人全般はこの様な意味で、議論を通じ哲学的階梯を登る、いわゆる対話術の能力は全くないといっていい。日本哲学が世界史の中で存在感をもっていないのは必然だ。なぜなら「和」の習性は或る多数派の考え方の反定立を徹底して妨げる保守要因だからだ。日本人の中にも不安遺伝子(セロトニントランスポーター遺伝子SS型、SL型)をもっていない人が少数いるから、彼らがいわゆる思想家となったとき過去の考え方を脱却し、日本文明を前に進めてきた。他国と異なる日本思想が皆無でないのは少数ながら自分の頭で考える能力を持てた人がいたからだ。日本思想の全てを不安遺伝子の有無に還元するのは無理だが、少なくとも幾らか関係あるかもしれない。「和」を脱し、同調している多数派に反するなんらかの考え、しかもより進歩的な考えを発表したり、その元で少数派の生き方をするのは、個性が認められる限り他国の常識でも日本ではほぼ不可能なのだ。
移民の導入も「和」の観点から不安がられているが、安倍晋三首相はこの種の日本民衆の習性を利用し、表向きは技能研修生という名目にしたり、右翼ごっこを擬態することで右翼全般を欺いた。そうして日本を世界でも有数の移民大国にしたわけだが、これは「和」を脱構築する意味で正しい方途だと思う。日本人全般の行動習性「和」では、多数派が同調していれば、自分に有害な最悪の行動、例えば集団自殺でも受け入れて行くのは歴史が証左している通りだ。つまり多数派世論かのよう見せかけ安易な「和」が不可能になる移民導入は、安倍氏が日本史の壮大な転換点で残した数少ない功績の1つだと思う。移民がふえればふえるほど既存の日本人の型と相当違った人々が国内にみられる様になるので、これまで通り「和」という同調圧力で個性を潰そうとしてもできなくなっていく。自民党や安倍内閣を多数派が支持しているという世論調査が、日本人全般の同調により逆説的に、不可避の和の破壊を招来している。
簡単に言うと、安倍氏は加速主義者なのである。加速主義はここでは資本主義の自壊に適用される語彙を超えて、「ある体制の矛盾点を加速度的により強化することで保守派自身の集団自滅を煽る」という、政治体制に援用した意味だ。ここでは安倍氏の数多の二重基準のうち特に「和」の自壊にあてている。例えば小沢一郎氏は正統的な政権交代文化論者だろう。勿論、先進国は基本的にどこもその立場だから彼は先進国並以上の知性といえるが、安倍氏は寧ろ加速主義の立場から自民寡頭政治を通じ、長期政権文化の矛盾点を強化している。それが保守派の自壊をいざなうのも必然で、結果は小沢氏の得なのだ。
私は以前から安倍氏の加速主義者ぶりに実は気づいていた。だから前回の国会議員選挙も行っていない。放置すれば安倍氏が旧体制の自壊を進めると予見できたからだ。そして現時点でその通りになっている。悪法や不正行政は致命的な段階に進んでいるし日本経済も抜き差しならない共産化に陥っている。
「和」という日本人全般の行動習性を十分に理解していれば、知性がある者ならその然るべき使い方も分かる。勿論これを悪用するのは優れた人格ではないから、できるだけ人類全体の公益公徳と一致させねばならないが。知識人は、安倍氏も同じ視点でみるべきだ。使い方次第で旧体制を破滅できる人材だ。