軽減税率をもつ消費増税は一般に累進課税だが、日本では同時に輸出企業にとって消費税は二重課税になるという名目で消費税が免税対象なので、特にトヨタを筆頭とする輸出型の多国籍大企業に有利という二重性を持つ。
つまり日本での軽減税率をもつ消費増税は、大企業に最も有利な累進課税である。
よって消費増税で最も損するのは国内売り上げ比率が高い中小企業であり、一般国民のうち税調整(再配分)の恩恵を受ける貧者ではない。尤も、国民の殆ど、具体的には企業数で99.7%、従業員数で69%と過半数以上が中小企業で働くので(国税庁2014「民間給与実態調査」)、結果、一般庶民の負担が重い。
いいかえると、消費増税で損得を並べると、得する順に
輸出型大企業(海外売上高の比率が高い多国籍企業)>海外売上比率が半分未満の一般企業>国内向け中小企業
国民単位では
輸出型大企業の株主・経営者・従業員、及び貧者>海外売上比率が半分未満の一般企業の従業員>国内向け中小企業の従業員
安倍氏の消費増税論は、この筋で分析すると、アベノミクスと自称していた新自由主義路線と帰一。主にトヨタを筆頭とする自民党へ企業献金をしている大企業優遇政策、もっというと中小企業に勤める過半数の一般国民虐めによる、中流破壊・格差拡大政策だとわかる。この安倍氏の消費増税路線で進むとこれまでと同じく、大企業の内部留保が増大し、株価が上がることで貧富の格差が広がっていく。そして内需7割(貿易依存度27%。UNCTAD、2017)の日本のほぼ全企業(日本の全企業の99.7%。上述)は衰退し、全従業員の約7割(同上)が負担を背負う。
ではなぜこの路線に、国民一般が反対しないのか?(2019/4/28の読売世論調査では賛成45%、反対48%と拮抗)
第一に財政再建の負担を国民一般が払うのに反対ではないのではないか? 要は自虐的。同時に、経済と政治の役割の違いに無知過ぎ、政府による格差拡大政策を容認しているのではないか。
山本太郎氏が数億の寄付金を単独で集めたのは、消費税廃止とはっきりいっているからなのが大きいと自己分析している記事(「れいわ新選組「消費税廃止」を掲げる本当の狙い 山本太郎議員に聞く」AERA、2019/6/19。記事1、記事2)を読んだが、彼は軽減税率込み消費税が基本的には累進税制なのに無自覚に見える。まあいわゆる人気政治、大衆迎合、ポピュリズムの要素があると思う。
より詳しく分析すると、日本国民一般は消費税の名称が、他国でいう付加価値税(VAT, Value Added Tax)ではないことから、消費にかかる税金だと思っている節がある。しかし実質は企業の値下げ圧力になるので、他国と同じく付加価値にかかっている税であり、負担者は企業なのである。つまり日本の消費税で問題なのは二重課税の論理を使う法の抜け道として、輸出型大企業にはいわば減税措置になってしまっているところであり、「付加価値税」という他国と同じ名称に名を正し、それら輸出企業にもきちんと負担させた場合、企業の収益規模にかかるいわゆる累進課税強化の効果なのである。
この意味で、山本氏の消費税廃止論は、はっきりいうと俗受けを狙って消費税・付加価値税の本質を捉え損なっている。彼のこの論法、消費税は逆進性を持つとする価値観の流布は、安倍氏の寡頭政治的な大企業癒着の露骨な金権政治よりはましかもしれないが、税制の本筋からいえば大いに世論を惑わせていると私は思う。
私の意見としては、上述のよう消費税を他国同様に付加価値税と正名し、輸出企業にも負担させ、軽減税率を更に強化して庶民一般の負担を軽くするのが正道ということだ。特に企業数でほぼ100%、従業員数や実需で7割な中小企業を主とする内需経済を強くする、即ちその部分に減税するのが経済政策の善政だろう。いいかえれば輸出企業にも負担させた付加価値税は軽減税率を含む限り、増税しても構わない。なぜなら累進課税だからだ。代わりに消費税を廃止すればよい。
これまで内部留保税が検討されていた様だったが、この意図も付加価値税の正名で或る程度補える。大企業の方が絶対値の収益が多いからだ。
内部留保税の合理性は、大企業などが日本的慣行の株式持合いや、投資にすらならない現金等価物等により収益を世の為にならない仕方で貯め込む状態を防げることにある。つまり企業が収益分を投資や株主還元に振り向ける税制からの鼓舞になるわけだ。だからこの点も、企業献金の違法化と共に検討されるべきと思う。
追記:但し、法人税に対し二重課税となるという指摘に対しては、現今の法人税制では企業側が赤字を意図的に作り出す経費扱いの法の抜け道があることから、法人税を撤廃する代わり、課税地点を利益が出た時点の前にずらす(利益に対し、配当か内部留保かいずれもに課税する)内部留保税を新設することで、社会的公益性が高い経済に改良していける筈である。
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