完全な暗がりの晴海で
僕は闇を見た
それは底知れぬ
どこまでもどこまでも深い
その頃僕はとても若かった
この世にはもっと明るい
大都市の夜景があるものだと
思い込んでいた
そこで見た闇は
自分が呑み込まれるばかりか
大宇宙の星屑を全て見えなくするほど
深い深い深淵
大丈夫かと声がした
それから地下鉄で帰った
イギリスの田園で
その花が咲く
マンチェスター隅の歩道で
街灯がちらつく
僕はその頃少年で
ひたちなかの駅前から
遠い会場へ向けて歩いた
夕方の生温い風
僕はその頃少年で
肌に受ける風さえも記憶するほど
この世の全てが傷つけてくる様で
スーパーカーが涼しさをかなでるのを
少し遠い会場の芝生で
未来からの言づてみたいに聴いた
真っ昼間の雨
教室の窓から眺める町は
多分永久にかわりないだろう
この町はそういう所だ
小さな疋蛙のこどもは
はこべの蔭からまっさおなそらを見る
大都会の真ん中で
僕は降り注ぐ昼の光でさえも
既に間違えてしまった
とりかえしのつかない答案の様に
なにもかも違ってるのを見た
小さなこどもの僕はあの渓谷で
静かに流れゆく星空のうえに
自分自身とその歴史を流し込むだけでも