2010年5月31日

悲喜劇

幕上げながら
登場人物A 赤マントの男
「もし君に人類を絶滅できる剣があれば
それが見つかりさえすれば
あの邪悪きわまる人類どもを
何一つ理解できず、常に繁殖していた
二足歩行の猿どもを一匹のこらず
見つけた片端から皆殺しにしてやるのに
おそらく奴らは
いつものてくだで
君とその軍団を
訳も問わず悪者へ仕立てて
理不尽な暴力を振るってくる。
野蛮人とはそういうものだ
何を話しても無駄
ただ一つの対話は同じ手で抹消
してやることだけだ
何世紀かけても、人類という
邪悪な種を、地表から殲滅し尽くす
この命題を仰せ遣う偉大な市民こそ
誉れたれ! 君は
どんな宗教も、どんな教育も
奴らを変えることはできず、どんな理想も
奴らの耳には届かないのを見た。
奴らは豚の様に繁殖し、
善人を悪者仕立てに祭り上げ
よってたかって死刑にする習慣をやめなかった
邪悪なる人類よ! 貴様らが
地表のみならずこの宇宙の隅々から
跡形のこらず消え去ることこそ
貴様らにとり最高の幸せなのだ!」
登場人物B 神父
「おぉ神よ、かの聖をゆるしたまえ
この世に生まれた如何なる命も
どこへさまようかもしれぬ小さな方舟にすぎぬ
どうして人類の破滅へ向け
神御自ら創りだされたこのおおつちを
かれ自身の似姿が流す
真紅の血で、染めたがろうか?
今に気づくときが来る だれも
破滅への道はとめることならぬ」
登場人物C 関西弁の老人
「(酔った様に、大袈裟な身振り)
やぁかましいわ! 黙れや
牢獄の中でな、
いまさらお前ら、わあわあ泣き叫んでみたとこで
どうせ救いがくるはずないねん!」
沈黙
赤マントの男
「どこへ旅立とうと夜は
深く、君達を覆い隠すのだ。そして
底しれぬ罪業の末に
万物を闇でぬりこめる! あぁ
だれが地表の出来事を本の束の間だと気づこう?
どの叫び声も 一つの必然
罪深い人類の築き上げたどの建物も
風の前の塵に同じ」
神父
「神よ!」
関西弁の老人
「(同様に、酔狂の風で)
じゃかあしいあ! なんやお前らぁ
(幕下りはじめる)
なめとんねんとあかんねぞ、うら
いっぱつかましたろか、ぁ?
コラあほぼけカスゥ」
幕半ば下りた頃
神父
「おぉ、なんという」
幕下りる