まっさらなダムをそば立たせる春雨の儚さ
神奈備の山から起こりし曇りしめやかなる
アスファルトを染め上げる薄紅の上ゆく車輪
海寄りの田畑稲穂に住まう疋蛙一斉に隠れる
音を立てて鳴りしきる杉林のもと地蔵様見る
列島を覆え雨の為なる春先の恵み野良犬を濡らせ
過ぎ去りし風の向きに聞こゆるのは常磐の波打つ夕暮れ時
うす盆の街を走り去る明々と照らす電車から見た海空
何もない空へ浮かぶ真ん丸のお月様は君を観る
二度と戻らない若々しい頃も若葉と共に葉桜と散る
街を侵す消防車のサイレンが遠くへ伸びゆく
蒸散する路上から黒猫の走る山あいへ消える
滔々と流れる川あお鷺の戯る空に月架かり下る
神社の上の椿散るただひとり錆びゆく手摺りよ
生温かい街からの風を夜景の上に溶かし混む色
多摩丘陵へ降りる青
歩道を走る子供のキックボードが硝子の街を写す
隠されたのは