2008年3月25日

椿

はためく空模様を眺めると、祈りも届かないなんてありえないと、信じられる。つくばいに添えて霜雪に山茶花の実。難しく考えられるひとは幸せ。普通はあいにく、何もかもを有りの侭に捉えるので精一杯でしょうから。着物の模様も、庭のあちこちで聞こえる霜溶けのなかで左もあざやかに映えること。射し込むあかりは細く細やかで、もろくも消え去ること。屋根を伝うわずかな雫は、つららの先を降るとふと地に着く。私の踏む雪駄にもほのかに、その感触が肌に渡る。冗談はしない。懐かしいのは昔のこと。あでやかに咲きかえす椿は、隅にしんみりと静まりかえっている。