2007年1月6日

建築論

今日では私は新造形主義が造型美術の目的だとは思わない。モンドリアン以下のデ・ステイル派の為した活動が人類美術史上に傑出した意味をもつ事を疑わないが、他方ではその社会的適用に際しては必ずしも最良とはいえなかったことも知っている。
 ミース・ファンデル・ローエの様な芸術家は、彼らの原則としての教義には明確な距離を置きながら、むしろその本質的意義としての抽象を同時代で社会的に達成している事に注目すべきだ。謂わば芸術における原則とは、ある天恵が確立した様式を大多数へ伝承する際の方便にすぎない。我々は創造力が原則の破壊を旨とすることを美術史上に観るだろう。以上の気づきを以て今日の私は造型美術の究極目的が抽象にあることを疑わない。
 新造形主義やミース様式といった原則的指向は、私にとり所詮、先人の模倣に終始する制作上の誤謬、修養の方法でしかなかった訳である。