電話は切れる。だが僕は知っている。もう誰にもこの、絶望の淵には到達できない。誰ひとり助けに来る筈ない。僕の心底を覗き込むどんな窓も部屋には、とりついていないのだから。
「どうして、なぜ僕なんかに構うのだ。僕はもう、現世に未練はない。これから生きていく為にはあまりに疲れ果てたよ。誰のせいでもない。僕はその様な、絶望の星の元に産まれついたのだ。そして自らがその、黒星からの庇護を選んだんだ。なぜ邪魔する」
「人間はみな離ればなれになる。どんな命も老廃して死ぬ。そうすればなんの安心もない」
巨大な天の川を吹き渡る宇宙の風は、ふたりの闇夜を介した情念の対話を流し去った。そして後には、延々とひろがる引力場だけが残された。