2006年10月18日

世界

だいだい色の夕陽が、地表を占める多くの建設物に一様な影を投げ掛けている。今日という日が終わる。地球で生活する昼行型生物はねぐらに帰り、今度は夜勤の番が来る。慌ただしくして昨日を経る無数の命は一体、何を目標にしているのだろう。
 地を這う小さな蟻達は次々に餌を運ぶ。長期間トラックは都市に張り廻らされた脈道を通って又、同じように物資をあちこちへ移動させる。絶え間ない運動の証拠は、深夜の高速道路を満たす光束の投射になって姿を顕す。
 文明は力の暗喩だ。様々に弾け飛ぶエネルギーは目的のない音楽祭みたいに形態と想像とを空間自在に展開する。夜は耽る。そして場面は回転する。
 七色に散らばった幾つもの朝焼けは、星のどこそこで今だけの風景を作り出す。二度と繰り返されない一定秩序の化学物質の合成と分解とがこうして君の前に、素晴らしい暁を昇らせてくれる。海浜にぽつん、と点景を刻む一粒の人物は、宇宙事業にアクセントを与えるための作業員。彼の目に映る輝ける太陽が明日も、地球という偶然を維持してくれることを世界は願っている。たとえ、とわに叶わぬ祈りだとしても。