2006年9月26日

夢見

朝焼けが眩い。世界を浸す静かな音は、夢中の内に溶けて幾多もの念願を揺らす。地球は廻り続ける。
 空は太陽の照りつけを写してまほろばの合間を繰り返しふらつく。海沿いのテラスに遊ぶ一対の影が体現する法は、宇宙の塵舞を尽くして流転に続く。踊り、狂う。秩序は崩れ、反り、退屈を浸す。去りし時は覆す事能わない。地表の戯れを見送る雲往は展開と縮集を反復して後果てる。
 行人は砂浜の隅々に住まう生き物の様子を眺めて、旅程の成就を祈る。過ぎゆく世相を鑑みるにあたって、やるせなき発現の潮汐を反省するに如ず。夜が過ぎ、朝が来る。
 だが対象の因果は不変の体で時空を充たす。遂に仕舞うのは季節の要を縫う光だけだ。
 魂が闇雲を進む宵に、都市の姿が彩やかに見える。天は赤紫に瞬き、妖しくも際どい世紀全容の気色を為す。私はその何処かに在って、会えない誰かの心を探し求めている。何の為に。日々を繰る両手には血しぶきが笑う。己の血である。生きる度に必須とされ、新陳代謝を余儀なく搾取廃棄され、次第に大宇のエーテルと馴れていくもの。すべては夢でしかないのに。