やがて夜明けがやって来る。写し世の暗い喩えが熱を帯びた土地に降り注ぎ、草の子を次第に捲る。所へ旅の中途に在る役人が行き先を尋ねる。何処へ行く、太陽は答えない。只、雨中に魔法を照らすのみだ。
命は理由を持たず漂う、儚き御霊に過ぎず、世界は彼等を遊覧する揺り篭の如し。空模様は暗湛自然、東京の姿を降り注ぐ陽光のもとに順々曝き出して行く。待つ人は知れない。いつ解放が訪れるのかを。
月日は往く。気づく間にか二人は離ればなれ、美しい旋律はあわれ萎れて大空の隙に溶け込んだ。今はもう、誰も居ない。静かに回る球体の運動だけが虚構の淵を覆っている。