2006年7月23日

建築論

人類の生活は次第に地球化されていく。というより、地球化された生活が我々の中に発生する。普遍文明の理想は地域風土個別性の脱出を志向する。にも関わらず自然空間は個別性を要求する。ここに現代建築計画にとっての、大きな矛盾がある。
 近代合理主義は究極的に、完全な均質空間を創造するよう導く。一方で、合理主義の更なる現代的展開の果ては自然空間の異質性を適度な範囲に利用する所に行き着くのではないか。為らば、建築の未来の方向性は何処にあるのだろうか。地球生態系の持続を促進する必要から、ある程度の期間、地球の各文明では自然主義的な個別空間を形成するよう要請され、またその潮流が支配的になるだろう。しかし、最も広遠にして偉大なる理想の建築が為には、あらゆる個別的性格を限界に至るまで抹消した普遍空間の必然が自覚さるべきである。それは宇宙船としての実現を要求している未来建築の基本理念である、と理解されるべきだ。地球の土地に根ざした創作物に関してのみは、自然空間の性格こそが地球的生活の証明になる。