2021年7月25日

国際常識と池田信夫氏の反日論

エイブラハム・クーパー氏は、「原爆投下は個人的に戦争犯罪と思わず死傷者を減らし戦争を終わらせた事実がある(戦争犯罪視するにはより証拠が必要)*1、あるいは南京大虐殺の事実関係を日本政府は直視すべき*2で、安倍首相の靖国参拝は戦犯や人道犯罪者を合祀しているかぎり不道徳*3」と、或る種の国連史観に近い一米国人としての国際常識を語っているにすぎないのに、池田信夫氏は彼のSWCを反日団体あつかいしている*4。一体どういう訳か?

*1 *2 『新潮45』2000年12月号

――原爆による無差別爆撃の事実は明らかで、これは戦争犯罪ですから、アメリカの戦犯追及を考えるべきです。

クーパー 率直にお話しますが、個人的に言うと、私は原爆投下は戦争犯罪だと思っていません。

――それは納得できません。非戦闘員の殺害は明らかに戦争犯罪じゃないですか。

クーパー ノー。戦争というのは非常に悲惨な出来事なわけですけれども、二つの原爆を落としたことで、戦争が終わったという事実はあるわけです。もしトルーマンが原爆を落とさなければ、さらに多くの死傷者が出たでしょう。

――それは原爆投下を正当化する話ではありません。

クーパー 広島の記念館に行って私自身も祈ったわけですが、結論的に言えば、もし原爆投下を戦争犯罪というならば、もっと証拠が必要でしょう

…… 

クーパー ~省略~ 南京の場合を論じますと、三七年の事件当時、世界がこの問題について発言をしなかったのは不幸なことで、それが今も影響してるわけです。けれども、歴史的にみて、まだ全ての文書が明らかにされていないし、まだ依然として動機についての議論が色々あります。これは日本の友人として言いたいことなんですけれども、我々が信じているのは、三〇年、四〇年代の全てのドキュメント、文章、映画といった資料は公開され、正当に歴史化の目にさらさなくてはいけないということです。国際委員会を設立し、歴史学者を呼んで事実を究明していき、最終的には白書を出す。それが将来にとって色々と効果があると思います。

――どんな効果でしょうか。

クーパー 一つは、日本の歴史を知らない若い世代が、この白書で事実を知ることができます。二つ目は、日本の外務省の人にも言ったのですけれども、センターとしては、アメリカ国内での関係資料の公開と、中国政府に対して全ての関係ファイルを公開するように要請する準備も進めています。日本にとって国益に一番沿うのは、そのような委員会を設立して、真実を明らかにすることです。もし歴史がはっきりすれば、中国政府がこの事件をテコに使って、日本にいろいろ要求するのを封じることもできるわけです。

――歴史を明らかにすることは非常に賛成です。ただ、SEWは『ザ・レイプ・オブ・南京』を書いたアイリス・チャンをサポートしていると報じられています。けれど、彼女の本には多くの間違いがあることが指摘されています。

クーパー アイリス・チャンだけではなく、本多勝一氏を招いてフォーラムを開きました。多くのアジア系アメリカ人の活動家がこのフォーラムに参加してくれました。

――アイリス・チャンと本多勝一という人選はあまりに偏っています。否定派は招かないのですか。

クーパー センターとしては色々オープンな形で受け入れるけれども、「犠牲者はわずかに三、四万人」というようなことを口にする人を講師として招くことは、絶対にしませんアイリス・チャンについて言えば、彼女は彼女の先祖の人に何が起こったかということで怒っているわけです。で、彼女はこの問題に対する日本における沈黙の一つの掟を破ったという役割は演じているわけです。日本政府やその関係者はこれについて怒りを表明しているわけですけれども、現実を直視するのが日本政府の責任だろうと思います。

*3 msn産経ニュース『靖国参拝「倫理に反する」 ユダヤ系団体も非難』2013.12.27 11:17

ユダヤ系団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(本部・米ロサンゼルス)のエーブラハム・クーパー副所長は26日、安倍晋三首相の靖国神社参拝を「倫理に反している」と非難する声明を発表した。
 副所長は「戦没者を含め、亡くなった人を悼む権利は万人のものだが、戦争犯罪や人道に対する罪を実行するよう命じたり、行ったりした人々を一緒にしてはならない」と指摘した。

*4 池田信夫氏の以下ツイートより。

SWCは中山氏の政治信条とは異なる「反日団体」だが、どういう目的で通報したのか。
 サイモンヴィーゼンタールセンターのクーパー「原爆投下は戦争犯罪ではない・靖国参拝は倫理に反する・日本は南京大虐殺を直視せよ」

――池田信夫アーカイブ

これが防衛省の副大臣だということが深刻。戦争は一刻を争うので、咄嗟に反日団体に連絡するような副大臣で、日本の危機管理は大丈夫なのか。
――池田信夫アーカイブ