2019年8月18日

ケルトン説は総じて共産経済の回し者

財政収支(Primary balance)の赤字が民間の黒字、故にMMTは正しいとするケルトン氏の理屈は、好景気時に財政黒字になるのを前提とすると確かに唯の詭弁なのが分かる。この点でケルトン説はケインズ理論の財政出動を赤字国債残高を無視し促進する目的で捏造されたものに過ぎず、本質的に虚構である。
 通常の財政赤字・黒字幅の調整は市況に対し、過度のインフレ・デフレに向かい操縦的に行われるべきだが、赤字国債の債務残高の過剰はそもそも内国経済が失敗している証でしかない。また政府が踏み倒し前提に借金を重ねる最終負担者は金融機関や保険を通じ、国債の実質購入者になる国民一般である。
 ケルトン説はケインズ政策(財政出動)が計画経済の分量をふやす点を意図的に無視し、意図的にインフレ目標なるフィリップス曲線の成立を前提にした過度の財政支出を正当化する目的の確証偏見といっていい。いいかえれば計画経済の失敗に対し何の反省もない点で国家社会主義財政論の変形版である。日本国債を預金から自動的に金融機関・保険会社により買わされる一般国民は、MMT並びにその小規模版であるところの国家社会主義的な赤字財政政策を通じ、広く預金の低金利により、他国に比べ重い計画経済分の非効率の負担をおわされている。
 日本国民全体が今日政府へいうべきことは、MMTによりさらに自ら負担をおう目的の財政出動の要求ではなく、寧ろ金融機関による冒険投資を促す立法(金融機関投資促進法)や、民間消費支出を伸ばす目的で、基礎年金保障することだ。(詳しくは次のブログ記事「れいわ新撰組の公約批評によせた中くらいの政府論、及び全額預金保護制度含む金融機関投資促進法、基礎年金保障・GPIFボーナス制などの提案」で各制度を論じた)
国民一般は消費したくないのではなく消費する家計の余裕がなく、老後及び将来不安のため貯蓄に回さざるを得ないだけだ。老後と将来不安をもたらしている基礎所得部分を政府が保障することで消費支出が上向く可能性が出てくる。そもそも憲法に定める生活保障義務を政府が怠っているのが致命的失敗だ。
 今日しられている生活保障は一律貸与(universal credit)、基礎所得(basic income)、生活保護の捕捉率を限りなく100%に近づける政府の義務があるが、少なくともこの順で制度化し(先を実現すれば後は略せる)、同時に基礎年金部分をGPIFボーナスと分け国債で絶対的に賄うのが王道である。日本経済が不景気なのは、この様に将来不安が大きすぎる、そしてその直接原因は日本政府なり公務員組織が腐敗し、水際作戦などと称し生活保護を不正視したり、そもそも基礎年金保障を怠っている失態がある。これら政府の生活保障信用度が低いほど国民は消費に回せず貯蓄してしまうので景気が悪化する。その国民の貯金分、特に7割超を占める高齢者分はどこに回っているかなら銀行を通じ既に内部留保が余っている大企業へのETFを通じた傾斜配分とか、さらにその企業の現金等価物などを通じ国債購入分になっている。いいかえれば構造的に成長抑制力になり、計画経済の非効率部門に注がれているのだ。
 日本国民の殆どは一般の中小企業の従業員なので(企業数で99.7%、従業員数で69%と過半数以上が中小企業で働く。国税庁2014「民間給与実態調査」)、諸々の上場大企業優遇は国民一般の軽視なばかりか格差拡大による経済成長率低下の直接要因になっている。トリクルダウンは起きなかったのだから。
 ケルトン説のうち政府の赤字は民間の黒字との詭弁は、これらの論理から、現代日本に関しては単なる構造的不景気の維持促進、更なる延長を意味するばかりか、経済全体のうち非効率部門に注がれた資本により国家自体のGDPを下げる結果になる。つまり手口を変えた社会・共産主義経済の回し者でしかない。