2019年7月1日

無能な振りをしていた方が利口

人は無能たるべし、この吉田兼好の言葉は極多くの真理を含んでいるので後生は豁目して見るべきだ(『徒然草』第二百三十二段、「すべて、人は、無智・無能なるべきものなり」)。我々はつい有能さを自慢したり、そうしないと金が儲からないとか人気が出ないとか信用されないと思い勝ちだから、鼻持ちならない人間になってしまう。実際、世間的に肩書きとか実績とかで威張っている人が世人から賞賛されていると、自分もその一員にならねばならない気がしてくるが、現実により優れた態度は正反対だ。
「能ある鷹は爪を隠す」という諺はこの兼好の辞と類似の内容を示しているが、"The squeaky wheel gets the grease" (きしむ車輪は油をされる)と逆の意味で、要は真に有能でも一般に無能な振りをした方がいい(嫉妬や羨望を買うと損するから)、しかし不満があればきちんと述べる方がいい。