2019年7月1日

累進付加価値税論(れいわ新撰組の公約批評に寄せて)

れいわ新撰組の「8つの緊急政策」のうち、私が明らかに間違ってると思うのは、その程度が甚だしい順に4.公務員増やしますと、2.全国一律・最低賃金1500円「政府が補償」の2つで、他、1.消費税は廃止にも一定の問題があると思う。それ以外は野党は皆共通して願ってるだろう、唯の常識と思う。

4、公務員増やします
は1.消費税廃止や2.一律最低賃金とも関連するが、山本氏は公務員数が他国と比べてどうかという観点を論拠にしているけど、これは詭弁でしかない。他国と比べたある対象の多寡は優劣の根拠にならないからだ(要は他国の劣った点にあわせると堕落、平準化にしかならない)。
 日本の行政が既に比較少数の人数で回っているならそれは他国より効率的なのだから(行政自体が効率的とは到底いえない)、寧ろ維持促進すべきである。ただでさえ非効率部門な政府の人員をふやすのは総じて矛盾している。要は安全網は生活保護の捕捉率向上か、一律貸与で補い、民間委託を進めるべきだ。
 行政が非正規雇用者を使って経費節減してるのを山本氏はポスターで非難している。だが民間も同じだ。つまり本質的には非正規雇用法がおかしいのであり、直すべきなのは不安定な非正規雇用者の方が正規雇用者より高い賃金でなければならないという法改正、または、そもそも非正規雇用法の撤廃である。

2.全国一律・最低賃金1500円「政府が補償」
フリードマンの立場は最低賃金を政府が決めるのは不当な市場干渉で巨視経済にとって有害というものだと思うけど、私もこれに同意する。ここでいう巨視経済は地球規模、世界規模のもので、政府が雇用市場に計画経済的に闖入すると非効率が温存される。要は政府は雇用市場にも、人権侵害級の違法行為でもなければ基本的に口を出すべからずというわけで、最低賃金なんて必要ない。もし生活困難なまで賃金が低下したら社会保障で補えばよい。つまり一律貸与、基礎所得、捕捉率100%に近づけた生活保護のいずれかを先に拡充し最低賃金法を撤廃すればいい。

1.消費税は廃止
消費増税が経験的に景気を冷やす効果が見られた、ということから、現時点での引き上げは問題があるという論理なのだろう。だがこの観点は幾らか粗雑すぎる。以下にもう少し詳しく消費税の本質を分析し、私がふさわしいと思う政策を提案する。
 第一に消費税は他国では付加価値税(VAT, Value Added Tax)で企業にかかる。日本の消費税も同じものなので真の負担者は企業である。名称が違うので誤解を招いているが、企業は消費税・付加価値税を上乗せしても消費者が買ってくれる額でしか物・奉仕が売れないので、売上から納税分を引くわけである。消費増税が景気冷却に働くのは企業の納税分が増えるので、利益圧縮できない企業の負担がふえるからだ。この意味で消費増税で値上げしますという企業に売上低下の負担が行く。国民一般は税を調整(再配分)されるから寧ろ総じて家計が助かる。つまり消費増税は見かけの景気悪化と実質の家計補助になる。
 同時に、他国でも軽減税率とあわせて消費税・付加価値税は徴税されるので、総所得に対する日用品の負担が重い一般庶民は、奢侈品を消費する金持ちに比べ、相対的に家計が楽になる。つまりこの税は軽減税率を含めれば累進課税である。
 これらを併せみると、軽減消費増税は庶民の家計を楽にするのだ。
 以前この点をより詳細に論じた。『消費税を付加価値税に正名し輸出企業にも負担させる税制案、及び内部留保税の投資鼓舞効果の考察』
 付加価値税について私の立場に近いのは、恐らくウォーレン・バフェット氏で、彼は累進消費税という概念で軽減消費増税を主張する(後述)。要はバフェット氏は単に日用品の無税化・減税を行うだけでなく、高価な消費に高率増税せよというわけだ。私の説明した観点に立つばかりかそれをより強化せよという意見で、そもそも顕示的消費の本質は庶民にまねできない重い負担をみせつけることだから私も累進消費税かつ軽減税率に賛成するものだ。
 問題はこの時期だが、例えばせやろがいおじさんは動画「日本経済に止めを刺す消費税10%に一言」の中で、いわゆる通説的論点に立ち、景気回復でインフレになってから行おうという。いってみれば山本氏も全野党も同じ観点で民意を反映、或いは世間受けを狙っているわけである。
 確かに一般論として教科書的に、消費増税の経験則としてインフレ抑制にすべきと考えられている。バフェット氏も1994年のネブラスカ大学講演でいつ累進消費税を導入しても1、2年間は経済の足を引っ張ると予想している。が、彼は長い目でみればそれが富を築くとしている。
 私の時期論としては、善は急げという意味で、消費(付加価値)税率の目標値までその年頃の景気感をみながら柔軟に上げ幅を調整しつつ、今すぐ徐々にあげていく方がいいのではないかと思う。この目標値は総合的に判断し、国民全体の消費生活の程度が他国と比べ裕福な状態になる様に整えるべきだ。
 日本政府の歳出の殆どは社会保障と地方交付(2018年、財務省)で、要するに主に東京の大企業本社が全国民から搾取した金を徴税し、一般庶民に調整していることになる。いいかえれば消費増税で一番負担になるのは、実際は内需中心の大企業群なのである(輸出企業は相対減税)。上述の小論で詳しく述べたが、二重課税の名目で現時点の消費税は輸出企業にとって相対減税になっている。だから付加価値税と名を正しながら輸出企業にも負担させれば、総じて累進性が担保される。軽減税率が分かりづらいという点は、西洋でみられる様に、日用品を一律無税にすればいいだけだ。
 まとめると、山本氏の消費税廃止論は時期として、或いは正名の点で一理あるが、消費税は付加価値にかかる、且つ、条件つきで累進的という本質について彼は理解が不十分と私は思う。現時点では
1.消費税廃止
2.日用品無税の累進付加価値税(PVAT, Progressive VAT)の創設
4.景気感をみつつPVAT漸増
がふさわしい。