2018年10月15日

絵画論

絵にしかできない表現と、写真にしかできないそれは違う。この点で写実絵画の伝統は意義を失った。絵とは抽象性にしか目的がない。
 絵らしさを全きものにした絵と、写真らしさを全きものにした写真とが重要だ。この両者を混同させる表現は、全て間違っている。寧ろ写真は写実絵画が果たしていた役割の一部を受け継ぐ。記録だとかモチーフによる象徴だとか。
 絵の伝統は抽象画が引き継いでいく。
 商業が絵に与えた影響は過大視されている。はっきりいえばそれは完全に無視して構わない程しか絵画史に意味をなしていない。商人は俗人だ。バンクシーのパフォーマンスといった瑣末な嘲弄に対し、絵画史は全く意を介さず存続する。美術市場を相手どる類の芸術家は、全く無意味な作業に時を無為にしているのだ。政治的要素とか、経済的要素は絵画史の本質と無関係だ。あるべき事は絵自体の探求でしかない。