2017年7月20日

芸術と幸福

幸福に益するもののみを求め、そうでないものを集めるな。他人の不幸を喜ぶ者となれあうな。俗人とつきあうな。俗人を見聞きするな。
 大金を得た人は貧者を嘲笑うが、貧富は幸福ではない。大金によって行える限度が慈善なら、より大きな富はより絶対数量の大きな慈善に役立つものでしかなく、貧者の一灯に比べ尊いものではない。金を儲ける事なく慈善し続ける事は可能であり、そのふるまいのみが本来の善行なのだ。
 芸術のわからない人は悪趣味を買う。教養のない人は愚行に沈む。人は芸術の中に生まれ芸術と共に死ぬ。彼らをとりまく環境は、彼らの審美眼そのものだ。だからよき趣味と共に芸術を愛する人とつきあうがいい。
 人にとって自然は芸術を含み、自然自体に住まう事はできない。芸術性が人間性なのだ。自然と調和のとれていない大都会の人々は、感覚的な幸福を得る機会を悉く失い窒息する。不幸な都会人のある部分は不満と鬱屈を合理化するべく、幸福な田舎者達を差別と偏見、冤罪により訳もなく侮辱する。大都会は不幸の源泉である。幸福な人は都会に住まないのだ。よき趣味の人々は美しい街に住まう以上、自然と調和のとれた田園都市、或いは田舎町をつくるだろう。
 自然は美を模倣する。人は芸術によって美を定着させる。芸術は幸福を生む。