2016年11月6日

作品

拙劣な創作者と、人格が完成されていないのに子供を産み育てる人達には共通性がある。まずい作品という意味で、たちの悪い子供も人々から邪険にされ悪所に住まわる。酷い作品がすぐに忘れ去られ、どこか悪い環境におしこめられ、早速葬られるのも、あしき親から生まれ育った子供と一緒である。
 対して立派な作者の手に成る偉大な芸術は、いつまでも忘れられず大事に保存されている。偉人が道徳的に尊ぶべき要素が多い程、事情は同じ経過をたどる。
 拙速は巧遅に劣る。巧速が拙遅にまさるとしても、人格の完成した若者がまれな様、早熟な天才も折れやすい。周りの嫉妬や無理解、清貧に耐え抜く心根は、凡その天才にとって体験的に得られる為だ。もし伝記や物語で未経験の苦難を頭で知っていても、実施にあたって諦め、挫ける者がいかに多い事か。そして彼らが果せぬ夢として子孫に託そうとした何らかの希望さえ、親の人格に応じた程度にしか教育できないのだ。悲劇は続く。凡愚の輪廻はそれ自体、克服すべき課題を先送りしているに過ぎない。だから天才の作品のみ偉大だとして、彼らは凡愚に想像もつかない苦難を、精神力、心身の努力によってのりこえてきたのだ。