2010年3月1日

ゆめに見た簪が
ほとんど奥行きないプールの
底でゆらゆらとゆれるのを
真夏日におぼえる
大気は音もなく震え
まちがいなく訪れる小鳥の
さえずりを受け流し
遠い島国の曲をかなでさす
ゆずられた席は
ただの一人分の小さな
座布団が敷かれた間だ
勿来の駅舎に居る
私は横切りつづけていく
すべての車や波や云が
それ自体として完璧な
幻であると思う