2010年3月18日

何もない社会の上であおがらす
寒くあり東京直す薄き靄
誰もなき霞の中の街の様
遅すぎる開店時間と浅いつとめて
東新宿毒々しき色のダウンジャケット
温かなおーいお茶飲み首都うつろ
ハングルが語るざこばの湿り気や
不夜城へ通ううお共凍りつき
救いなし歌舞伎町に住むま冬の御器被り
ひとでなし浮浪者見捨てる厚着ども
天皇が一人威張れば葉よ散れる
借金で大学通える宮家の嚔
くさ/\しあるく庶民の妙なき呻きぜ
何気なき陽の波のこった凍る朝
消えされよこのきな臭き霜付き場
面影はあれどきたなき下水川
見下ろせば上のつもりか霧都庁
煙草吸う気違い孃がアルタ前
倒るればそれで終って冬子也
集まりて為す事どうなの繭峠
児のべゞ群れ打つスーツに紛れ込む
臭う毛布の前へ魅せる宝石
飼い羊新卒とかで同じ顔
外人にゃ譲る改札寒々し
腐った界隈へ襟巻き小学生
もういいよ広告枯らせよ山手線
売り場ごと冷え込み代われる不安感
iPod使いもせぬが散る間際
社員競争分かるが冷たな接客だ
間抜けかなソニーの回るおもちゃ凛
安物を嫌ゑり原宿偽欅
うすら寒しいつものGAPまえ撮影隊
あの店員で冬眠せぬ携帯売り場は
また建てどぬくき人あるマンションか
100円ショップ店員あかるく乾きける
銀座ならみせびらかしで毛羽立てり
鴨遊ぶ玉川へ浮くヘッドライト
椎名林檎のイメチェン浅き真冬日
われ厭う東京の春一番を横切る
謝って絞るバルブと豊田の薄
また建てり茄子畑なくせし夭き家
もういいや飛行機へ着せよ羽布団
俄か雨か霙の六本木
旅立てる人と等々力渓谷の雪
ジャズなのか枯れ木と滝と錦鯉
御苑まえ家なしの這う天皇誕生日
分からず買ゐしセールの白いダース
春早すぎる石詰め都気持ちわるき