2010年2月28日

分解

人は作りすぎた巣の所為でおのれらの生存圏を過密にし、結果として共食いを始めていた。この競争はかねという餌の奪い合いで、同類をいたぶり殺すところまで進んでいた。人は愚か過ぎる脳の容積しか持たないので、我々には憐れみすらもてないが。そもそも彼らは、生態系全体の中ではごく少数の気味のわるい変異なのだから。それら人というものは、かねを貪る以外には何一つも特徴がなく、巣を無限に拡大するつもりでおのれらの餌を食い尽くして行った。だが彼らの餌には限りがある。
 虫かごの中の世界はあまりに醜悪で、二度と観察したくなかった。だから僕はその網入りの箱を研究室の奥の棚で放って置いた。数年振りに見てみたら、すでに土と少しの荒れ草しかなかった。全ては分解されたのだ。