2009年9月25日

五輪招致計画上の知的欠陥

会場間をむすぶ交通に焦って燃料電池自動車をつかうという提案があるらしいが(某大手新聞がソースなので真偽は疑わしいが)、この自動車そのものが市場化の最終結果では最悪のしろものであると認識していないとすればそれは東京都の、或いは計画に関係する都職員の科学知識が不足しているのである。
 水素という物質はいわゆる水素爆鳴気と呼ばれる加熱による爆発性がある。瞬間的に酸素と化合して3500℃近くの炎火と同時に、非常に大きな爆鳴音を鳴らすところにその化学現象上の特徴がある。だから市場化する以前には、この欠点のありえない見逃しが事故による被害の致命傷となることをやっと認識した自動車会社の化学の常識にすら通じておらず技術畑出身でない幹部か、経済産業省関係者が、その一般商用開発の無用か害毒を悟ってひきかえすことになる。もし当計画通り燃料電池自動車を輸送手段としたまま簡単な事故を起こせば当然この五輪選手は死亡し、また事故地周辺への復旧困難な災害を引き起こすだろう。
 その様な随所にみられる招致計画上の知的欠点を修正したければ、技術者、エンジニアという階層や集団からの撰良によって今のものよりはるかに現実味にあふれて将来像としても工学的十分に維持可能な、失敗率を極端にひきさげた知的な輝きのある計画案を抜本的な見直しのすえ提出しなおさねばならないだろう。
 そしてややこしい衒学理論に構えた大上段の学者や、各種の理想論を吐くのをなりわいとする批評家との関連づけを気まぐれな世論に逆らってすらできるかぎり最小化し、真摯な土木技師の如くほとんど施工図レベルで実現直前の段階まで歩みを進めてなおも天命を待つ必要がある。こういう精根を傾けた努力の結果、すべてが惜敗という結果に終っても計画立案そのものの持続可能性は行政的文脈上に記憶されていくとも考えられる。たとえばどういう地点でどんな施工方法をとれば円滑に交通量の整理が計れるか、或いは二酸化炭素排出量をできるだけ逓減しながらどういう入札方式と学的根拠で建設形態を調えれば計画全域のリクリエーション値(愛顧される快適性)を増大できるか等の解決策は一つの再開発上のモデルとして、プレゼンテーション上のつよい波及効果を他都道府県や世界都市へも持つだろう。