人類の一員が人類の一員として
果てしなくつづくつらなる旅を終え
何処か
とても広くて深い偉大な台地へ登り終え
そこでまるで大昔に見た
劇画みたいな我々を見下す時
大空から大鷲がやってきて
君へ忠告しました
スデ ニ タビ ハ オワッタ
アト ハ ユメ ヲ ミル ダケ ダ
そうして透き通るだけの空へ消えていった
進化済みの優良な個体である君は
もうあのおぞましい同類たちの影もなく
ほんのささやかな宴をひらいて
これまで旅を共にしてきた仲間と喜びを分かち合った
もう地獄の絵づらは
観るべくもない筈だったから
かれらは喜びの中で
宇宙の調和について心行くまで語り合うことが出来た
そこは天国かと思えた
大層な不穏は無く
あるとすれば小さな誤解とそれをからかう
害のない機知くらいだった
少年院でさえもかれらには
弱肉強食の世界よりは随分マシに感じられたのだった
大空を舞うカラスが
君達を眺めて意味も込めず鳴いた
代わりに研究室で親の金を使って
夜ごと酒盛りをする大学院生がふとした隙に
その足元の床はバラバラにほどけて
真っ暗な奈落の底へ
命ごと墜としてしまった
弱肉強食の社会の為にやはり殉教したのだ
誰からも省みられず
静かに
ページを閉じなさい
もう世の中のありさまは
見なくてよい