2009年6月20日

東洋道徳の世界史的分析

東洋人は伝統的に奴隷制度を大幅に採用して来ず、代わりに政治道徳を正当化してきた。徳治思想の本質は協働にまつわり最小の調整的摩擦で生産量を増大させること、いわゆる和を貴ぶ感覚は集約農耕民なりの功徳である。市場の囲い込みだけが儒学の目的とするところだ、と考えても遜色はない。
 有閑期を保ち得るほど合理化の進んだ設備的進歩を果たしながらもその生産至上目的の習性だけは一向に変わらず、過剰価格によってはっきりした過剰性能の製品を低利で大量生産し国際貿易における覇権を占めつつある経済的思想体も、この消費道徳の未発達或いは生産的徳の強調という東洋圏の大きな特徴の一つとして数え上げられる現象である。労働者にとっては、仕事は理性に縁の薄い忙殺を望むかれらの幸福へ寄与する。こうして、農耕民へ適切な徳を説いてきた東洋人達は原理的に、現代に於ける労働者仲間への指導役を保全する事に成功した。