鮎川の夏の始めに遊びしほとりで
並んでコンビニのざる蕎麦を食べる嬉しさよ
誰もいない海岸線を撫でる風が
停めた自転車をかすかに湿らせて行く
テレビの中で騒ぎ回る大都会の光景
段々と似てくる下らない月9のドラマみたく
我々の町を変えていく力
海の向こうから聞こえない音楽を
ただ一色で塗りかえてしまう
畦道はアスファルトで舗装される
姦淫の雑誌が回し読みされる
偶像がホルモン剤を打って女装する
当たり前の姿を訳もなく卑下させる
僕は名前もなく声も押さえ込まれた
一羽の孤独なからすになり
右翼の宣伝カーが耳を割るがなり声で
渋谷交差点を鈍行で渡るのを見る
清川はお笑い芸人に潰されて
代わりに京都土産の芸者屋が建つ
極東に渡来した黄色人種が
金儲けするためにあの川のほとりを潰した
恥という観念のない汚れた心の笑みで
タレント知事が僕の目の前を通りすがる
後から何人も何人も
東京湾から這い出してきたへどろが笑う
なんの罪もなかったんだろうに
皇居を護る名目で
情報汚染をファンタジー化するのだ
僕は名もない土砂降りに濡れたからすとして
今ではどぶ水を流しゆく川を眺める
だれからも省みられることのない
高架下の江戸川だろうに
悲しみの声さえ
君は絞り出せない