2008年6月25日

化学

イオン発生器として日本のメーカーが様々な空調に付け加えている機構の実質は、無声放電機である。無声放電がオゾンを発生させることはよく知られている。即ち、
3(O2)→2(O3)
そしてこのオゾンは大気中に不安定で、酸素に戻る。
2(O3)→3(O2)

 この際に酸化作用を持つことは沃化カリウム澱粉紙を青化することで分かる。
2(KI)+O3+H2O→I2+2(KOH)+O2
いいかえれば、オゾンは酸化剤である。又、もしこの大気中での酸化作用を詳しく説明づけるなら、以下の様に考えることはできる。大気中の水蒸気と反応して、より安定して存在できる低エネルギーな電子配置に移ろうとする。従ってオゾンは大気中で過酸化物を経由して、更に安定な酸素にまで還元しようとする。
 以上を化学反応式で示すなら次の様になる。
2(O3)+4(H2O)→2(H2O2)+2(H2O)+2(O2)
さらに
2(H2O2)+2(H2O)→4(H2O)+O2
なので、全体としては
2(O3)→3(O2)
と見なすことができる。
 この反応式全体は酸化過程を示している。オゾンに大気中で酸化反応がある理由は以上により説明できる。従って大気イオン関連の知識はこの酸化作用の範囲では必然とはされないのである。
 然るに、メーカーは私的利益を優先する場合も免れないし、学問的に十分な証拠のない製品を市場に出すこと、その際の蓋然性を有利な銘柄情報と見なして技術独占競争に逸る傾向も暫しある。
 而して、今日市場に出回っているイオン発生機の実態は以上のオゾン発生を誘引する無声放電機により説明可能なのであって、大気イオンを関連付けるのは未だ学問として根拠薄弱であると言わねばなるまい。結局これらの科学的蓋然性の功利的使用は今後とも、市場経済には不可避の現象であるだろう。消費者は個人の知識と批判能力、或いは信頼性の高い政府ないし公共機関による第二次情報をのみ、体のよい広告へ資本を大量投下するかれらの行き過ぎの実験台にならない為には必要としている。そして民放では必ずしもこの目的に耐えないだろう。
 だからわれわれは科学技術を批判的に流通させる為には、市場経済より行き過ぎの危険を少なく抑えた生協を必然に欲するだろう。これらの生活協同組合を通じて購入した商品はもっぱら生産者および消費者であるわれわれ自身の利害に関わるので、安心できない商品を流通させることは原理的に不可能である。又、我々はオゾンがそれ単体では人体に有害である、と認識している。大気中ではやがて酸素になるという酸化作用を利用して、各種の殺菌漂白消臭などに応用されてはいて、にもかかわらずこの量については規制がなくてはならないことは専門家にはまだしも一般認知されるに至っていない。
 今日のイオン関連商品がオゾンをどの割合で発生させるか、この自然酸化の速度に対して残ってしまった分の吸引量が長期間にわたり連続してないしは短期間に一度にどのくらいで人体へ致命的な酸敗を与えるか、これらの緻密な調査と法的規制が、無声放電機の名前を代えた市場流通について、最大の注意を要する命題であるだろう。参考とすれば、有人時最高0.05ppm以上に暴露しないことが今現在、世界の主要な環境基準では骨子とされている様ではある。しかし0.01ppm程度でも軽い臭気を感じることがある様で、一般にオゾン暴露の危険は知られていない。断続的な場合などの調査は未だ正確にはない。
 更に、0.1ppm付近では暴露したマウスから生まれた新生児が死亡、0.5ppmを6~10時間暴露し続けると染色体異常、1ppmでは気管支炎等という資料はあり、いずれにせよその大量な暴露による危険性はどうにも確からしい。
 又、海洋研究開発機構によれば、中国汚染大気の越境により光化学スモッグの主要成分とされるオゾン濃度値が、日本の本州中部にて、2020年では2000年に比べれば平均12%上昇するとされる。もしこの被害が無対策で実際に現れれば、日本国内で肺病にかかる率も上昇するであろう。従って大気酸敗を回避するための塩基化対策が国内上空にも必然となる。
 研究機関にこれらの実験を通じての検疫を要請することは、市民の健康を守る為に地方自治体、および厚生労働省に科せられた当為であるだろう。