2008年2月20日

音楽論

全世界を流れる詩情を表現せしめねばならない。人間は如何なる人種とも同じく、生き物の一種に過ぎない。あらゆる生き物と共生する道を探り出さねばならない。音楽はこの為の道しるべとなる。人間は自然の一部に過ぎない。そのページは短い。
 あらゆる芸術の目的は自然との調和を交響することにある。そしてこの調和は文明と自然との中庸折衷である限り、双方の展開に従って無限に追求しうるものだ。
 大宇宙の調和にとって人間は遥かに小さい。我々の技が小さくなれば小さくなるほど、宇宙的秩序の調和は高鳴る。人間は作為を以て作為を完璧に否定しえなければ芸術の云奥を極められまい。芸術美は究極において大自然の崇高と一致する。我々は唐詩における没法子の境地に今日でもこの顕現を聴く。既に失われてしまった天明の輝きでさえ、永劫遥かなる人間の心を震わす。我々の芸術は文明の盛衰を越えて、森羅万象の調和に寄り添う。恰かも台風の最中に巣に隠れた雀が翌朝の青空と共に飛び立つ様に、我々は自然の中に密やかに住まうことを許された卑小なる被造物に過ぎない。