2007年1月3日

海景の描像

遠い空に浮かんでいる雲が君の足下にやって来て、時間の彼方へ自由を連れていく。それが正しいか知れない。波は飽くなき今を追求して止まないだけ。かなしみそのものが海のあいだへにじみ出す。夕焼けのあとには薄闇のあおさしか残らない。
 人という体制が育つまでしばらくの間、青い星の主体を構成してきた水素の行き先。また生き物たちは水を媒介にして価値ある文化をつみあげた。世界はそこから始まった。いつかそこへ帰る。
 太陽と月が見下ろしている砂浜の形は時々刻々とうつりかわり、まちからの声をしばしとどめては削除するまっ更な画布である。
 人物は小さな点景として、造化の力学に含まれた見えない要素。我々日常の建設とは異なる文脈で、宇宙の再構築に参政している場所だってある。想えばいつでも君はそこにある。
 失われるものを求めてはいけない、とひとは言った。失われるものは求めるためではなく、それでなお遊ぶためにあるのだから。
 崇高さとは定量化できない大自然への絶対畏怖と似たもの。君にとっての空間的地平に似たもの。さればこそ波打ち際は一時もやまぬ音楽の源として万象運動の姿を示す。