朝昼晩と繰り返し、生成しては命を飲む季節が滔々たる滝のように昔話を流し去った。いつしも、そうして地球は回り続けて来た。昨日も今日も、又明日も。あさっても、繰り返し、繰り返し。
だがひとつだけ変わらないものがあった。それは太陽と地球との仲良しだった。
ときどき、二人のあいだに割って入っては関係を乱す物象があった。月である。
彼女は、陽光の反映を受けてかがやく衛星であり、決して自体でときめく存在ではなかった。だからこそ余計に、ふたりの心徹した信義が羨ましかったのである。
やがて地球の上ではお祭り騒ぎが始まった。人類が繁殖して、文明を築き出したのだ。
夜にも消えない光が宇宙の奥までゆっくり届く。段々と力をつけて行動を広げ、宇宙船に乗って近くの惑星に移り、彼らは幾つもの建設をした。
太陽と地球はそれを見守っていた。別に気にするほどのことではない。そのうち、彼らは隕石かなにかの衝突による環境異変に適応しきれず絶滅するだろう。蟻のような戯れにわざわざ構うほどでもあるまい。
しかし月だけは違った。白い人類はすぐにやってくる。そうなってから浸蝕を後悔しても遅い。とりあえず月はのんびりくつろぐかぐや姫たち御一行を姉妹星であるパラドックスへさっさと追い出して、ぴょんぴょんあちこちを跳ねまわる兎を一匹残らずひっ捕らえ、みんな化石に変えてしまった。そのうちに人類の一員がやって来た。彼らは拙い物体からそろそろと降りると、一本の旗を彼女の眉間あたりに突き刺した。激痛が走り、手術は終わった。
すっかり包帯をとって癒えた彼女はもうかつての自分ではなく、どうやら多少なり時代に迎合した容姿へと改造された模造人間であった。莫大な後悔と共に、一抹の希望が胸をよぎる。これで地球は遂に、私のほうを振り向いてくれるだろうか。
だが物語はしばし残酷だ。観賞の対象として神秘で彩られた過ぎ去りし平安はやがて遠く、ただの切り売りされる岩塊とみなされた商品は、立地という予件以外にどんな天賦の権威をも剥奪されてしまう。
くるくると回転するだけの芸当を以て今後、厳しい銀河業界を生き抜いていく気遣いはない。かの女は欲望に支配され、やがてその美容をすっかり無くしてしまった。
太陽と地球は彼女の気持ちを一向に知らない。そして楽しい昼間を演出するのだ。
宵の更ける頃になると天空に、刻々と表情をうつろわすかなしい風貌が姿を現す。