2006年7月7日

空色のせせらぎが地上を隈なく満たす光になって消えていく。無数の鳥が飛んでいく風景のどこかで、君は月の涙を受け取る。海の底を覗く。キラキラ輝く海底の景色のなかで、世界で最も大切なものが話しかけてくる。
「何のためにあなたは生きているの」
少なくとも産まれたからだよ。それ以外に何が。
 私はいつでもここにいて、旅立っていくたくさんの命の息吹きを育んできたわ。そうだろうね、海の字のなかには母なるものが存在する。太陽よ。ならば、我々は星屑の子供なのだ。
「どうしてあなたは産まれたの」
太陽系の秩序がそれを満たしたから。あなたは本当に、産まれてこなければならなかったの。必ずしもそうではないかも知れない、何れにせよ貴女はわれわれを羽ふくみ、育てた。
 けれど、生きていくことはいつも困難だ。
「私に責任はないわ。すべては偶然なのだから」
 やがてイルカの群れが一場の光景をすっかり塗り変えてしまう。
 水中に奇跡の虹が架かり、ふわふわクラゲの間に夜の帳を下ろす。竜巻が地上を制覇して沢山の人々を殺し尽くしてしまうだろう。それでも、海の底は依然として平和なのだ。
 夏休みが来て、小学生の列がどんどん海岸を浸してしまう。渚を騒がせる潮のかおりがやがて、色んな風味を満たす。