2005年10月20日

人間

都会を歩く人を追う。視野は上空にあり、1人の若い女性に照準が合っている。超高層ビルの谷間を抜け、やがて雑多な商店街に着く。
 視点は近づく。女は灰色のパーカーを羽織っている。ポリエステル製のそれは、歩みを進めるたびに擦れ、独特の音を出す。彼女はアジア人らしく、長いまつげを持っている。背は150くらい。比較的痩せている。
 彼女は、とあるドラッグストアに入る。視点が入り口前に固定する。暫く経つと黄色い手提げ袋を抱え女が出てくる。我々は目的もないまま、再びその行き先を追う。
 交差点を抜け歩道橋を渡り、駅の地下に降り、雑踏に紛れる。我々は彼女を見失ってしまう。あとにはただ、匿名の人波だけが残された。
 時が過ぎ、深夜になる。空には綺麗な半月が浮かんでいる。絶えない人通りが地球に暮らす二足歩行の生命体の日常を物語っている。我々はただ静かに、その内容に耳を澄ませている。