2005年9月27日

走行

どんなわけがあるにせよ我らは小さな生き物だ。下らない話を繰り返し日々を何とかやり過ごす。なぜ生きてる。何が目的なのか。幾つかの真摯な問いは生活費を稼ぐ必要の前でまるで意味を為さない。そして子供は大人になり、大人しく社会人と名乗る会社員になるのだ。誰が何といおうと。
 名も無き喧騒にさいなまれている。ここは大都会。辺りを行き過ぎる無数の人波が語りかける民主主義の原理、平等を否応なしに、感じとる。まちがいないく君はこの国を形成する主人公の1人だ、と同時に匿名的で均質な大衆の部分に過ぎない。

 そんなことは知ってる。

 声なき叫び声は無限に生成されるコンピュータゲームの雑魚キャラみたく見える、宇宙で最も高貴なはずの生命群にかき消される。歩みは進められる。太陽が産まれ、塵は集まって地球をつくる。ちょっとして動く物がたくさん闊歩し始めた。君はそして実存する。それも全て、嘘の物語。

 信号が赤に代わる。人々は各々の定位置に就く。君はたった独りきりで車道の真ん中の分離体にとりのこされた。タクシー、ダークなシートに身を包んだ不気味なライトバン、レクサス、バス、消防車、選挙の宣伝カー、スズキの軽自動車。次から次に通る丸かったり四角かったりする流れる箱がそれまでに何が起こったのかごまかす。

 信号LEDが青に換わる。ぱっくり真っ二つに割れた車間には誰の姿もない。疑いようもなく誰もいない。犬も歩かないから棒にさえ当たらない。君は走り出した。一体何に向かっているのかは分からないにしても。