2024年2月17日

私の現時点での対以巴紛争・宇露戦争の日本単位での合理戦略論

以下、壺齋散人氏のブログ『続壺齋閑話』「跋扈する植民地主義の妖怪 落日贅言」(2024年2月13日)へ宛てた𝕏上の私からの返信のまとめ。

 自分は全然事情を知らない時、あるパレスチナの人に
「(うろ覚えで)イスラエル(あたり)の人ですか?」
と何気なくきいたら、その人は
「私達はここをイスラエルとは絶対に言わない」
と独特の強い語感で、怒った様に言った。

 ただハマスを快く思わないパレスチナ人も、融和派も恐らくは両国にいるでしょうね。
 ネタニヤフ政権の強硬姿勢の理由は自分はよくわからないが、『聖書』や『コーラン』をよく読んできた限り、ユダヤ教のキリスト教をへての発展改良版といえるイスラム教義と、ユダヤ教の選民思想は根本的対立がある。
 ご存知の通り、ユダヤ教はどんな困難を経ても律法を守る自分達が神に嘉されているとみるが、イスラム教はアッラーに嘉された信徒を攻撃する者に聖戦で報いる事が大正義とみる。血にこだわらないイスラム教の方が広がりが大きいのに、今のネタニヤフ政権の対応はムスリムの反感を買っている様にみえる。
 自分は壺齋さんの随筆はネットにある限り恐らく殆ど読ませていただいたのですが(特に本居宣長と上田秋成の論争の箇所とかとても参考になり感謝致しております)、この件に限っては、あなたはイスラエル絶対悪、そのあと押しする欧米日も悪との説で語られる。だが、単に政治的には逆の意見もありますね。

 自分は国際政治学の高橋和夫教授の講義をきいて、それなりに感じる所あったのですが、彼は確かに虐げられる人の立場にも立つのですがそれだけでなく、全ての関係者らの政治的動きや思いを単に感情だけでなく、複雑な人らしさの織りあいみたく語ります。
 恐らく学的には冷静な理解も必要かと思います。

 勿論あなたの仰るネタニヤフ政権の植民地主義の延長での建国理想論は、世界史全体の流れ的には――学問上は一面的な恣意的見解ともいわれる可能性があるが――大雑把には、力の政治の現場なのかもでしょうが、イスラエル側の内政とか、パレスチナ政府とハマス派の対立とかもっと事情は多分あるでしょうね。

 善悪というよりは宗教上の信仰の対立が根幹にあるので、力の政治の強弱だけに注目すると、民族虐殺にみえる。でも、ネタニヤフが本当にそんな風に思っているかは自分はわからない。要するに建国思想の実現を現実政治で解釈するタイプの人なのかもしれない。

 我々が善意だとしても、親ハマス側に入って反以側を非難する方へ全面的に傾く事が、むしろパレスチナ国家を長期的に聖戦集団から牛耳らせる結果を招き、内政の混乱を益々深める可能性も考慮する必要もあるのかもしれない。内政干渉もできないとはいえ、唯の人道支援は無差別で弱者にやるべきと思います。

追記
思うにこういう構図では?
1. ガザを選挙で勝ち実行支配した聖戦派ハマスを欧米やイスラエルはテロ組織と見る
2. パレスチナ政府を仕切る世俗派ファタハはハマスと対立してきたが、近年、エジプトの仲介でハマスと和解後の統一政府をめざしていた
3. ネタニヤフは巴政府統一を強制防止したいかも

(𝕏で途中で話しかけてきた「4人と4匹」氏へ)調べた所、サウジアラビアとイランがエジプトと共に今年初めからBRICsに加入した為、ハマスとファタハの和解を支持した事はそうかもしれない。
 他方ロシアのプーチンはネタニヤフにハマス除去協力を語っていた
 ロシアは親巴統一とは限らないのでは。あなた(「4人と4匹」氏)の説の根拠は?

 でロシアは?
 あなた(「4人と4匹」氏)はロシアが中東分断を狙ったと仰るが、私はその根拠をお尋ね申し上げております。あなたの推測ですか?

 つまりロシアが中東分断を狙う説はあなた(「4人と4匹」氏)の推測と。
 たとえばベルリンにいる米ジェームズ・マーティン不拡散研究センターのハンナ・ノッテはロシア大統領府が以巴紛争へ直接関与の証拠はないとBBCにいう
 プーチンの意図は科学的には不明だがマッチポンプ臭いですね。

 おそらくシリアやイランと深い同盟関係があるロシアは、同時にイスラエルとも協力姿勢をとる事で中東情勢で大きく平和制作者の演芸を魅せつつ、米国や西洋諸国が悪者である様にもみせたい。
 ユダヤ人と欧米の関係は密接なので、もし上記の通りならプーチンの戦略は今のところ成功していると考えます

 冒頭に戻ると、壺齋さんの随筆は、そういう国際政治ゲームに巻き込まれる市民の悲惨を顧みて人類の愚かさに失望する、といった論調で、老齢期の絶望に近いものを感じさせます。
 まぁ僕も人類の性質が邪悪だと感じた経験が多くその点はかなり同意できますが、基本解決策が国際政治ゲームなのも又事実。

 主要演者の一人としてシリア内戦時もプーチンは親中東側に立った。この場合はマッチポンプでBRICs側に暗にいても表向きイスラエルとも敵対しない二重の顔戦略で、欧米諸国の悪を安価に国際宣伝でき中東攻略に成功中とみえる。
 なのに親米偏重の日本はこの場合、中東勢を大まかに失望させてしまっている。
 英語圏依存度が高く西側媒体の強い影響下にいる日本だと、日米同盟への過信もあり反露世論に国内がほぼ完全席巻されてしまった。知識層も、自分が見てた限りパワー𝕏メン茂木健一郎氏ら英米出羽守が旗振り、自民御用学者の三浦瑠麗らも大体は反露側に立って安心なる米軍傘下戦術で宗主国依存度を深めた。
 素朴な意味では「どうせ日本は米国の犬だろう。戦争で負けてから所詮漫画国家」と軽蔑の文脈に置かれて、ほかの欧米諸国よりは相当ザコ扱いで、石油売るだけの相手と中東勢に思われているかもしれない。
 ネタニヤフは停戦交渉をやめた様子なのでまだ日本不利で弱者犠牲が続く。

 岸田政権を早めにひっくり返し、反以は実質反米を意味するので多分合理的ではないとしても最低反露へ行き過ぎを修正し、日本は平和主義の観点から、戦争自体に反対なので親米のスネオでは決してない、という真の心を中東勢にアピールする事が、長期的にわが国と以巴露との関係を友好化する道とみます。
 ただ自分は京都市長選で自公勝利を使って立民の泉代表を追いつめ、党首交代から小沢一郎政権を作ろうと動いてきたのですが、「敏腕」政権が樹立できないとすると、立民側の実力不足から却って日本内政が不安定化する恐れもある。
 ひとまず反露世論の行き過ぎを改善しておくのが今適切な現実策の様です。

 イーロンがいう文脈で、ロシア敗北はほぼない。物量や人的資源に大差があり、米国側が合理主義に回帰するのも元々必然性があるので、ウクライナはロシア削りに利用され米国に捨てられる。
 日本は寄付分を分捕られ負け組扱いされる。全体としてプーチンが有能な証拠だけ残る。

 以巴紛争は物量から以側勝利で中東の治安にとって不都合になったハマスが殲滅され終結の可能性が高いが、戦闘がかなり長期に渡りそうでもある。よって日本がとるべき道はプーチンの長期戦略の有能さを認め、以とも巴とも平和外交しつつ、露とも自民政権交代で再友好を進める事でしょう。米国も損しない。