2024年1月8日

特殊教育改革論

概要
・反社会性人格障害(Anti Social Personality Disorder、ASPD)は、他者の権利や感情を無視し、欺瞞や暴力を行う傾向がある。匿名のネット上では、特に加害行為を繰り返す可能性が高い。ASPDの診断と治療は、犯罪や公害の防止に重要である。集団生活が制度上はじまる初等教育段階で異常行動の生徒に、精神科の診断を義務づける必要がある。

・境界知能は、IQ70~84の範囲で、知的障害ではないが(*1 以下、アスタリスク(*のこと)後の数字箇所は該当数字の脚注内、後述資料を参照)、学習や社会生活に困難を抱えうる人々である。境界知能の人々は、必ずしも悪意で害をなすわけではないが、ASPDの人々にからかわれやすい。

・日本は、裕福で成績のいい側がイジメの標的になりやすい国である(*2)。学校教育は、成績や個性に応じた柔軟な対応が必要である。

・成績優秀者やギフテッドは、私学や私塾を使ったり、家庭教育や独学を主にしたりして、日本の集団教育から受ける害を避けるのが合理的である。

・特に、ASPDや境界知能の人々は、境界知能がASPDの標的になり易いので各々を確実に分けた上で、精神科つきの適切なASPD向け特殊学級、境界知能向け進度別クラスへの編入や、適切な学習支援を受けるべきである。

本文
 加虐的な快楽犯罪傾向のダークテトラド、ダークトライアド、サイコパスといった傾向の変異が、匿名で行動させると、特に無責任に振舞って公害をもたらすのであり、唯の読解力不足など、境界知能一般に、加害傾向がある訳では必ずしもない様に、一般に思われる。従って、社会または他人に悪意で与える害の点で、制度的隔離の義務が公的にあるとすれば、今の精神医学や心理学などで、上述の順で一般的な加害的傾向の可能性が知られている、「反社会性人格障害」と『精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)』上、診断されうる人々が、SNS上の不備を悪用し、何らかの犯罪や、加虐快楽目的の加害行為、或いは利己目的の他害行動を行う場合に、まずは限ると思われる。
 かつ、それらの反社会性人格障害をもつ人々へ、社会的包摂の論理を含め理解を深める形で、犯罪や、加害全般への対処、ネット上の荒らし対策、いじめ対策とか、或いは、彼らに誤って権力行使可能な社会的地位を与えてしまった際に起きうる公害への未然防止・事後対応策を徹底して講じる事が、将来にわたって、全文明国にとって重要かと思われる。
 思うに、人類全般にとって犯罪との戦いは嘗てから続いてきたのであり、反社会性人格障害の診断が可能になったという事は、ヒトの持つ加害性にまつわる、潜在的な脳の性質の一部が犯罪が実際起きる前に理解可能になったという事でもあり、その種の診断が下りうる人々をどう制度的に義務づけた治療や、公害のない形での社会的包摂に向けるかという事が、いまも荒れ続けている匿名ネットコミュニティでの集団虐殺事件はじめ、政府で制度化されるべき喫緊の課題かと思われる。ただ放置すればよくなるというものでは全然ないのが、良心の異常に欠如した反社会性人格障害者らの行う加害行為の実態であろう。つまり、公的に事前対策の義務がある。
 また、反社会性人格障害と、境界知能を兼ねている場合とそうでない場合がある為、境界知能を隔離論によって𝕏YouTubeなどで炎上させている堀江貴文氏らは、両者の標的に誤認がある様に思われる。境界知能で読解力がないだけの人々は、悪意で害をなす事は必ずしもないかもしれないが、集合的に、反社会性人格障害を兼ねているか境界知能でなくとも単に帯びていさえすれば、共感性が薄くて罪悪感を感じづらく、有名人やら社会的弱者やら善人やらへ、いわゆるルサンチマン(うらみ)の向けかえから、相手を痛めつけて痛快さを感じられれば誰であれ、からかって遊ぶ目的で、ネタ荒らし行為を進んでし、或いはそれになんの済まなさも感じず、平気でくりかえし犯罪する場合がある、そして当人が厳罰されない限り全く謝罪もなければ責任感も全然ない有様が容易に生じうる。

 又、この舞田敏彦氏によるPISA調査を分析した図によると、日本は調査対象国で唯一、裕福で成績のいい側がイジメ標的になり易い変わった国で、義務教育上、いじめや暴力、校内犯罪、不条理な授業進度の低下など、学習環境悪化の阻止目的で優先的・合理的に隔離するなら、「裕福な家庭の、成績優秀者側」のほうが、日本では殊に有利かもしれない。
(現時点でも、都市部では私立学校がその種の自主的隔離として機能していると思われるが、大抵の地域でもある非都市部では、私学の不足のために、自主隔離が不十分である)
 制度上、成績優秀者や特殊な遺伝、発達障害的な人々へ、飛び級や典型的でない学習であっても、教育歴と認める例外の余地を設け、特別な英才教育、家庭教育、独学など、いわゆる集団義務教育以外での教育を前提にした方がいいのではないか。

 学校社会内で、理論上、最も有害になりうる反社会性人格障害と診断される人をどう隔離するかについては、義務教育が全員に与えられるべきという観点からは、まず国の制度上、他害的な異常行動をする生徒へ確実に、精神科による診断を義務づけ、正式診断が下った時には、通常の学級ではなく、精神科の指導がついている反社会性人格障害向け特殊学級で教える制度にした方が、虐めその他の校内快楽犯罪の被害が一般にまき散らされる可能性が著しく低くなるかと思われる。
 境界知能の人々については、学習進度上、年齢別クラスでは平均知能指数以上の人々についていけないので落ちこぼれとされ易いため、反社会人格障害者向け特殊学級とはまた別の、いわゆるゆっくりした進度の特殊学級か、年齢別クラス制度を全てなくす、または進度別学習のできる塾その他の代替機関で学習する、さもなければ家庭学習その他の選択で、いわゆる平均知能向け集団教育以外の場で学ぶ形にした方が、当人達にとっても学習し易く、似た学習進度で気が合ったり学習内容を教え合う様なよい友達もよりできやすいであろうし、想像しうるおよそ全ての面で合理的かと今の私には考えられる。

 落ちこぼれ扱いの生徒が、集団教育の場で足を引っ張る形になり、いじめの対象になり易いのは、上述の舞田氏によるPISAデータ上も、わが国に依らない筈なので、一般的な親がわが子の特殊な個性そのものを尊重するより「普通の子にしたい」といった不条理な偏見をもつ事が往々にしてありそうな、同調圧力地獄日本の場合はいうまでもなく、境界知能生徒を、極力、進度別学習に切り替えさせるべき事は、どこの国でも必要かと考える。


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脚注
*1 『DSM-5』(『精神障害の診断と統計マニュアル 第5版』)。但し境界知能は精神障害ではなく認知機能の低下と説明される(平田正吾・奥住秀之『知的障害概念についてのノート(2)~境界知能の現在~』、東京学芸大学教育実践研究紀要 第19集、pp. 99-102、2023年)

*2 舞田敏彦『できる子、裕福な子が標的になる、日本のいじめの特異な傾向』Newsweek、2020年1月29日