世界中にあなたしかいなければ
この世はかくも平和だった
しかしあなたがいない世界には
だれの音沙汰もない秋の森の奥の様に
すべてが枯れ果てたあとのねいろがする
だがそのおとすらうつくしい
まるで獣すら訪れる事のない泉のほとりに咲く
すでにしおれてしまったバラのかぐわいが
それでもなお辺りにたちこめているかの様に
もしあなたしか世界にいなければ
この孤独のあしおとの中に
冬の訪れを待ちぼうけはしなかったろう
行き場のない落ち葉の響きすらものがなしい
もしあなたのかけがえない言葉もそのぬくもりも
ただの気のせいであったら