2023年7月24日

衛星

君のいない世界は
まるで時のとまった衛星のよう
美をつかさどる女神らの足音すら聞こえない

少しずつ暗くなっていく街並のよう
だれかが置いていった大切な手紙のよう
もう追いつけない影絵のよう
少しも積み重なっていかない積み木のよう

どっちつかずの選択肢のよう
君を愛しているという言葉を言えなかった時
すべては停止している
存在という存在すべてが自由を失い
墜落していくイカロスは地に落ちきる前に
僕へ辛うじて最重要の伝言を頼むだろう
まるで君の存在が消えない一番星のよう
自分の全存在を照らしだし
やがて救われるのを待つ療養中の鳩みたいに
自分が君だけを特別だと感じていることを
かずかぎりない粒度の色 音 質感で
この上なく丁寧に説明している

もし君がいなければ天の川の意味は失われ
まるで時のとまった衛星のよう
劇というには劇的すぎる大冒険は難破し
結論の出ない論考のよう
僕は奥行きのない世界をさまよい続けるだろう

一度も触れた事のないあの星のように