愚劣な人間の無知さからくる悪事は彼らの悪意と殆ど見分けがつかないし、実際に、かれらの中で殆ど同じか、双方がよく交差していることが多い。これを命題「性悪な人間は単に無知な為だけでなく、よく進んで悪を為す」にすることができる。
しかしこれは彼らが性悪な場合によくあてはまる事だが、性善的な人間には全くあてはまらない。
性善的な人間が何か悪事と思われる事をしてしまう時は「悪を悪と知りながら、自ら進んで悪を為すものはいない」とソクラテスが言った――とプラトンの書き残した――命題と総じて一致する。彼らは善意を持ちながら何かを行い、現実には悪い結果をもたらしてしまった場合でも、動機に間違いをみいだすことができないからだ。