2020年9月27日

消費税・法人税全廃とそれらを一元化した内部留保税新設案

Mirrlees Review(マーリーズレビュー、2010年11月10日)での諸提案について鑑み、かつ拙稿『消費税を付加価値税に正名し輸出企業にも負担させる税制案、及び内部留保税の投資鼓舞効果の考察』を更に進めた新税制の提案を出すが、先ず法人税と消費税を「内部留保税」にまとめ一律課税すべきである。

 2015年時点で日本政府の税収は主に消費税、法人税、所得税に大別されるが、このうち法人税と消費税は共に、実質、企業に課税されている。消費税は企業への値下げ圧力に過ぎないからだ。
他方C効率性(C効率性=税収/VATを除く最終消費×標準税率)を考慮すると理想的消費税(VAT、付加価値税)は軽減税率を含まないもので、実際、税システム全体の整合性を重視するマーリーズレビューでも「VATのゼロ税率と軽減税率は低所得者をターゲットとしているというよりは、特定の趣向を持つ人を優遇している」と評される。
 そもそも消費税と法人税をどちらも取っているのは課税主体論ぶった二重課税に過ぎない。実はある消費に同じ価格を払う消費者が負担していないのに、企業に負担させているからだ。
 また前掲拙稿で論じた様、現時点の法人税は課税地点を企業の最終利益(税引前利益)に求めており、抜け道が存在する。企業は法人税を払わない目的で会計を操作し、税引き前利益を過小評価させるべく、納税を繰り延べてしまう。したがって私の論説では経常利益を「配当」「内部留保」に振り分ける時点で内部留保に対し課税すべきと説いた。これで過去と同じ会計操作での節税、租税回避目的の企業による浪費ができなくなる。
 一方、消費税は一律税率の方がC効率性が高い。またそもそも直接的にも究極的にも商品・奉仕の価格決定権をもつ企業への課税である。
 よって消費税を一律にする限り二重課税防止でその全廃が望ましく、法人税も「内部留保税」に置き換えれば制度を簡素化し、節税防止で課税効率を上げる事ができる。

 消費税を全廃する事で、軽減税率及び当該項目計算が無用となり、企業に対する課税方針も一律化でき、脱税監視の手間も減る上に、主な課税上の公平性も「個人課税(所得税)」「法人課税(内部留保税)」の2つにまとめられ高くなる。

 自分に思いつく唯一の懸念は、表面上の法人税率が高く見える進歩的税制を他国に先駆け取る事で、一見すると商売をやり難くなると感じた一部の外国資本が日本で営業を忌避する可能性だ。だがこれも杞憂に過ぎず、現実には旧消費税分の計算も必要だし、一部多国籍企業に至っては日本で法人税を払っていない。そもそも緻密に税制を計算する能力もない外国資本――それは投機的で、わが国から浮利の強奪を狙うハゲタカというべきだ――の流入が、ある種の誤解で防がれれば一石二鳥といえようし、多国籍企業が国内で得た利益に対してもその日本で営業する支社に「内部留保税」を確実に課税する新法制へ移行すべきだ。