僕は上昇気流に乗り
無限に高く舞い上がる
その先に宇宙の果てにある
別の宇宙に辿り着く
だがその外にもまた宇宙があり
無限に泳ぎ続ける
この星を越えて
どこへ行こうとやはり
答えなど見つからない
生まれたわけも
死にゆくわけも
一秒でも長く駆け続ける為に
僕はこの気流のどこかで
息を吸う鳥になり
やがて宇宙船の上に流れゆく星の
そのひとかけらとなり
どこかで見失った君の言葉を
一つずつ拾い集めていく
無限に高く
果てしなくこの暗闇の中で
飛び上がる気球
しがみついたその手も離され
やがて誰もいなくなる
どんな星も見失われ
やまない雨のまんなかで迷う
命などどれも気のせいみたいに儚く
あすには誰のものでもない
再び石くれに返った魂
だがこの夜を越えて
僕は天地を壊し世界の外へ抜け
あの川のほとりで夢を語る
無限に深く
遡り続ける時の流れのどこかに
落とした宝物の指輪を探し
この足で水を蹴る
嘘が一つも残らなくなった暁に
既に倒れてしまった木々の合間に
もはや息吹一つ残されなかった荒野に
下らない衆愚の亡び去った骨の山に
紫色の空に
自分を見失ったその日に
太陽は新たな光線で
もう晴れないかと思えた雲を切り裂き
もう救われないかと思えた時空に風穴を開け
自由の隙間を作る
もし僕の絵筆が
努力の雫が
何か意味を持つその瞬間があれば
世界のページは更新され
途切れない列車の音の如く
騒音で満ちた大都会の中心で起爆された悪意の如く
一度も自慢された事のない高原の通り雨の如く
落し蓋の落とされた鍋が絶え間なく煮立つ音の如く
二度と消えはしない歴史を作るだろう
だから僕は語らねばならない
誰も知りえないまことのことわりを
いやそれどころか誰もが知りえた魔法の秘密を
誰もが消えてしまった地上のひとかどで
神として見据えたこの星の終わりで
サルスベリの一葉に吹き付けた真夜中の海鳴りとして
僕は前進し続けねばならない
もし君がいない世界だとしても
一瞬たりとも覆った事のない重すぎる巌をひっくり返し
モンゴル草原を全力で走る白馬の大群のその一員として
一匹のサソリ以外どんな生き物もみあたらない砂漠に
その体を洪水と共に押し流すスコールとして
僕は月の巡りくる影の内に
あらゆる存在を隠しながら
なおも刺し殺しあう血肉湧き踊る野生にて
一つも残らなかった贈り物の奪い合いみたいに
霧けぶる街に紛れ込んだ煙草の香りみたいに
十分すぎるほど重要文書につけられた赤い印みたいに
遂には見つからなかった美なるものの本質みたいに
僕は銃弾を込めてこのキーボードに打たされている
心の振動を少しでも押さえつける為の歌を
その微細動を